今週のコラム第148号「医師の働き方改革にとっても不可欠な地域医療構想の行方」(2024年9月24日号)

医師の働き方改革を実現するためには、前回のコラムでご紹介した医師の偏在対策とともに、医療機関どうしの機能分担を見直す地域医療構想の推進が必要です。

現在の地域医療構想は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて進められていますが、さらに2040年を展望して、入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護との連携等を含む、医療提供体制全体の新たな地域医療構想の議論が始まっています。その中で、限られたマンパワーによるより効率的な医療提供の実現も課題となっています。

今回は、医師の働き方改革にとっても不可欠な地域医療構想の行方について、ご説明します。

 

医師の働き方改革にとっても不可欠な地域医療構想の行方

 

1 2 0 4 0 年頃の医療を取りまく状況と課題

 

【医療需要について】

 

〇 2040年頃を見据えると、高齢者数がピークを迎え、生産年齢人口の減少が見られます。

 地域毎に見ると、生産年齢人口はほぼ全ての地域で減少し、高齢者人口は大都市部を中心に

 増加、過疎地域を中心に減少することが見込まれます。

 

〇 医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上の高齢者が増加し、これに伴い、2040年にかけ

 て、85歳以上の救急搬送は75%増加し、85歳以上の在宅医療需要は62%増加することが

 見込まれます。

〇 このうち、高齢者救急については、軽症・中等症の救急搬送が増加し、自宅だけではな

 く、高齢者施設等からの救急搬送の増加が見込まれます。救急搬送後の要介護度の悪化を伴

 うことも多いですが、リハビリの提供状況にはばらつきがあり、また、退院調整のために入

 院期間の延長等が見込まれます。

 

〇 在宅医療については、提供する医療機関は、近年、病院数は増加傾向にありますが、診療

 所数は横ばい。在宅医療の需要は、2040年にかけて需要が50%以上増加する二次医療圏が66

 あるなど、増加が見込まれます。在宅医療で医療機関・職員当たりの訪問できる患者数に限

 りがあります。

 

〇 入院医療については、病床利用率が低下傾向にあり、医療機関の医業利益率は低下してい

 ます。多くの医療資源を要する医療については、2040年にかけて手術件数が全診療領域にお

 いて半数以上の構想区域で減少となる見込み。外来医療の需要はすでに減少傾向

【マンパワーについて】

 

〇  生産年齢人口の減少に伴い、医療従事者の確保がますます困難となる中、働き方改革も進

 めていく必要があります。

 

〇 特に医師については、地域偏在や診療科偏在の是正のほか、勤務環境の改善も喫緊の課題

 です。診療所の医師は高齢化している中、人口が少ない二次医療圏では診療所数は減少傾

 向、人口の多い二次医療圏では診療所数は増加傾向にあります。

 

【地域差について】

 

〇 過疎地域を中心にすでに高齢者も減少している地域もあれば、大都市部を中心に高齢者等

 の医療需要の増加が見込まれる地域もあり、地域ごとに人口変動の状況が異なり、求められ

 る医療提供体制のあり方も様々です。

 

〇 例えば、都市部においては、増加する高齢者救急や在宅医療の受け皿の整備が課題であ

 り、過疎地域においては、人口減少や患者減少に対応した医療提供体制の維持が課題とな

 っています。

 

2 これまでの地域医療構想

 

【これまでの取組】

 

〇 現行の地域医療構想については、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、

 高齢化により増大する医療需要に対応するため、床の機能分化・連携を通じて、質の高い効

 率的な医療提供体制の確保を目指し、地域医療構想を医療計画の記載事項の一つとして位置

 づけて取組を推進。

 

〇 その中で、4つの病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)に着目し、各都道府

 県において、二次医療圏を基本とする構想区域の単位で、2025年の病床の必要量を推計した

 上で、毎年度、病床機能報告制度により、医療機関から病棟単位で病床機能等の報告を受

 け、当該報告等をもとに地域医療構想調整会議での協議を行うとともに、必要に応じて知事

 権限を行使しながら、地域の実情に応じて、病床機能の転換や再編等を進めてきました。

 

〇 国においても、地域医療介護総合確保基金、重点支援区域、地域医療構想アドバイザー、

 データ分析体制構築等の支援を行うことにより、都道府県と連携し、取組を推進してきまし

 た。

 

【評価】

 

〇 現行の地域医療構想においては、病床の機能分化・連携を進めない場合は高齢化により

 2025年時点で152万床程度の病床が必要と推計されたところ、2025年時点の必要病床数を

 119.1万床とする目標としていますが、病床機能報告による病床数は2015年の125.1万床から

 2023年には119.3万床になり、現行の地域医療構想で推計した病床数の必要量と同程度の水

 準となっています。

 

〇 機能区分別にみても、急性期病床が減少し、回復期病床が増加したほか、介護医療院等の

 在宅・介護施設等への移行等により慢性期病床が減少するなど、病床数の必要量に近づいてお

 り、全体として、進捗が認められます。

 

【課題】

 

〇 医療機関の機能転換・再編等は医療機関の経営に大きく影響することから、多くの関係者の

 理解が必要であり、合意形成に時間を要し、依然として構想区域ごと・機能ごとに必要量と

 の差異が生じている中で、2040年頃に向けて、医療需要のピークやその後の減少にも対応で

 きる更なる取組が求められます。

 

〇 また、病床の機能分化・連携を図る仕組み等について、これまで以下のような指摘もなさ

 れています。

 ・ 病床機能報告制度において、高度急性期と急性期、急性期と回復期の違いがわかりづら

  い。また、将来の病床の必要量と基準病床数との関係もわかりづらい。

 ・ 病床数に着目した議論をしてきたため、医療機関の役割分担・連携の推進につながりに

  くい。

 ・ 病床数の必要量の議論が中心となり、将来のあるべき医療提供体制の実現に向けた議論

  が十分になされたとは言いがたい。

 

3 目指すべき医療提供体制の基本的な考え方( 案)

   令和6年8月26日第7回「新たな地域医療構想等に関する検討会」資料

 

〇 85歳以上の高齢者の増加や人口減少がさらに進む2040年以降においても、全ての地域・

 全ての世代の患者が、適切な医療・介護を受け、必要に応じて入院し、日常生活に戻ること

 ができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を実現する必要

 があります。

 

〇 このため、入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護との連携等を含め、地域にお

 ける長期的に共有すべき医療提供体制のあるべき姿・目標として、地域医療構想を位置づけ

 ます。人口や医療需要の変化に柔軟に対応できるよう、二次医療圏を基本とする構想区域や

 調整会議のあり方等を見直した上で、医療・介護関係者、都道府県、市区町村等が連携し、

 限りある医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」を担う医療機関「治し、支え

   る医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、「地域完結型」の医療・介護提供体制を構築

 します。

 

〇 具体的には、

 

 ・ 増加する高齢者救急に対応するため、軽症・中等症を中心とした高齢者の救急の受入体

  制を強化します。ADLの低下を防ぐため、入院早期から必要なリハビリを適切に提供し、

  早期に生活の場に戻ることを目指します。その際、医療DXの推進等により、日頃から在

  宅や高齢者施設等と地域の医療機関の連携、かかりつけ医機能の発揮等を通じ、救急搬送

  や状態悪化の減少等が図られるよう、在宅や高齢者施設等を含む対応力の強化を目指しま

  す。

 

 ・ 増加する在宅医療需要に対応するため、必要に応じて現行の構想区域よりも小さい単位

  で、地域の医療機関の連携による24時間の在宅医療の提供体制の構築、オンライン診療の

  積極的な活用、介護との連携等、効率的かつ効果的な在宅医療の体制強化を目指します。

  外来医療においても、時間外対応や在宅医療等のかかりつけ医機能を発揮して必要な医療

  提供を行う体制を目指します。

 

 ・ 医療の質やマンパワーの確保のため、手術等の労働集約的な治療が減少し、急性期病床

  の稼働率の低下による医療機関の経営への影響が見込まれる中、必要に応じて現行の構想

  区域を越えて、一定の症例や医師を集約して、医師の修練や医療従事者の働き方改革を推

  進しつつ、高度医療・救急を提供する体制の構築を目指します。

 

 ・ 必要な医療機能を維持するため、特に過疎地域において、人口減少や医療従事者の不足

  が顕著となる中で、地域で不可欠な医療機能(日常診療や初期救急)について、拠点とな

  る医療機関からの医師の派遣、巡回診療、ICT等を活用し、生産性の向上を図り、機能維

  持を目指します。

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