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各医療機関において、2024年から適用される医師の時間外・休日労働の上限規制への対応を検討するに当たり、参加者の印象に基づく議論とならないよう、客観的なデータを示すことが重要です。
今回は、勤務状況やクリニカルパスのデータ分析により効率化を推進し、働きやすい職場環境を構築した事例をご紹介します。
【勤務状況やクリニカルパスのデータ分析による効率化推進と、働きやすい職場環境の構築】
(社会医療法人財団慈泉会 相澤病院(長野県松本市))
※ 458床 職員数 1,084名(医師 161名、看護師 493名、他)急性期
取組前の状況
【診療報酬改定への対応】
• 2012年度診療報酬改定の重要課題として、「急性期医療等の適切な提供に向けた病院勤
務医等の負担の大きな医療従事者の負担軽減」が含められ、医師事務作業補助者及び看護補
助職員の充実等が掲げられた。これをきっかけとして、医師及び医療従事者の負担軽減計画
の作成、検討委員会の設置を行い、医師及び看護職員の実質的な負担軽減が実現し得るよう
取り組んでいる。
【法改正への対応】
• また、2024年から適用される医師の時間外・休日労働の上限規制への対応として、勤務実
態の正確な把握と時間外勤務の管理により、A水準の適用を目指すこととして、多様な取組
を推進することとなっている。
【子育てと仕事の両立支援】
• 病棟看護師において、勤務時間が9:00~16:00に集中してしまい、夕方の時間帯の人員不
足、夜勤72時間ルール 、夜勤可能者の確保に苦慮していたことから、子育てに配慮しながら
も病棟運営に協力してもらえるよう短時間勤務の選択肢を増やす等、子育てと仕事が両立で
きる勤務環境への改善に取り組む必要性があった。
取組の内容
【医師及び看護職員の負担軽減検討委員会】
医師及び看護職員の負担軽減検討委員会を年4回開催し、業務体制・仕事配分の見直しを実施している。
• 病院長を筆頭に、各部から委員が任命され、多職種で構成されている。
• 各部で作成した負担軽減計画の承認及び進捗管理や、勤務時間等のモニタリングを実施し
ている。
• 参加者の印象に基づく議論とならないよう、客観的なデータを示すことが重要である。
【医師の勤務実態の把握】
ICカードで記録した出退勤データをもとに診療科ごとの勤務時間を設定した。またICカードに代わる就業管理システムの導入により、勤務時間を把握した。
• ICカードの打刻による出退勤管理システムにより、在院時間を把握した。出退勤データに
より、診療科ごとに出勤時間が異なることが分かり、診療科ごとの所定勤務時間を設定し
た。
• 2022年4月より、ICカードに代わり就業管理システムを導入した。在院時間ではなく、自
己研鑽と切り分けた勤務時間の把握が可能になった。
• 診療部内に医師の労務管理専門部署を立ち上げた。社会保険労務士資格を持つ人事労務経
験者を責任者として配置し、就業管理システムのデータ管理及び医師への指導を行ってい
る。
【宿日直許可の申請・労働基準監督署の活用】
現在は診療科の特性に合わせ、宿日直体制、二交替勤務制、オンコール体制等を設定している。
• 内科、外科、整形外科、産婦人科、SCU、HCUは宿日直体制、ECUは二交替勤務制とし
ている。
• 救命救急センターとしての緊急対応は、全ての診療科でオンコール体制としており、救急
対応手当として月額15万円を支給している。
宿日直許可申請について労基署に相談し、フィードバックを基に一部診療科で許可を取得した。
• 2019年10月~11月の宿日直の実績をもって、管轄する労働基準監督署に相談したとこ
ろ、外科及び内科については宿日直中の業務が多すぎること、その他の診療科については日
直月1回、宿直週1回の原則を満たさないことを理由に、全ての診療科で許可が下りなかっ
た。
• これを受け、宿直及び日直の原則を満たした運営体制を実現し、HCU、SCU、整形外科で
宿日直許可を取得した。
• 宿直及び日直の運営体制の構築にあたっては、それまで行っていなかった常勤医師も組込
み、また非常勤医師も依頼することで人数を確保した。
【クリニカルパス管理室によるパス管理】
クリニカルパス管理室を設置し、クリニカルパスの改善や業務の無駄の削減等を実施している。
• 看護師3名(うち2名が専任)を配置し、無駄な業務の削減、適正な医療資源の投入、適正
な入院期間の設定等の促進、クリニカルパスの確立と発展、クリニカルパスに関するデータ
評価・分析とパスの改善を実施している。
• 現在、パスは393件が運用されており、適用率は66.4%となっている。
【育児短時間制度の見直し】
子育てと仕事の両立支援として、育児短時間制度の見直しを実施した。
• 従来からある、1日の労働時間短縮に加え、1ヶ月の労働時間を短縮できるように変更し
た。
• 1ヶ月の労働時間の短縮を選択した場合、原則として1回(1日)の労働時間は短縮できな
いが、働くときは働き、休むときは休むというようにメリハリのある働き方ができるように
した。
• 夜勤が月1回以上可能な場合は、日勤帯については短時間でも可とし弾力的に運用してい
る。
取組の効果
【負担軽減検討委員会による各種取組成果例】
• 委員会で進捗をモニタリングし、医師の負担軽減に向けて多種の取組を実行した。
事例1 服薬指導(薬剤センター)
病棟業務をスリム化させ、服薬指導への介入を増やした。
事例2 静脈採血等の実施(臨床検査センター)
臨床検査技師による病棟採血業務の実施状況を確認した。
【育児支援制度の利用状況】
• 育休取得率、育休後復職率は育児短時間制度の導入以降上昇傾向にあり、2019年度には両
者とも90%超に達している。
• 育児時短制度は2022年8月時点で63名が使用している。職種ごとにみると、看護師等は1か
月の労働時間を短縮する制度の利用が多く、事務職員等は1日の労働時間を短縮する制度の
利用が多い。
【有給休暇の取得状況】
• 有給取得率について、パート職員は各年度で概ね80%前後と高水準を保っており、正職員
の取得率向上に伴い全体の取得率も上昇傾向にある。
〔「勤務環境改善に向けた好事例集(令和5年3月 令和4年度厚生労働省委託事業)」より〕
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