今週のコラム第96号「医師の働き方改革シリーズ第13回
『現場の声を重視した医師の働き方改革の実践』」
(2023年5月9日号)

「現場の声を聴かずに経営会議で決まった「机上の空論」を押し付けても、現場が混乱するだけで改革はうまく進んでくれません。『残業を減らしたい』、『ここさえ改善できれば』などと思っている現場の声をきちんと拾い上げて、そのフィードバックをもとに方針を立てていけば、『医師の働き方改革』を進める道は自然と開けてくると私は確信しています。(佐藤文彦氏著「コーチングで病院が変わった(2021年3月発行 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)」)

 

今回は、コーチングを用いたコミュニケーションによって、「現場の声を拾い上げ、それをもとに解決策を考えていく」ことで、医師の働き方改革を実現した、順天堂大学医学部附属静岡病院の事例をご紹介します。

 

【現場の声を重視した医師の働き方改革の実践】

(順天堂大学医学部附属静岡病院(静岡県伊豆の国市))

 ※病床数633床 急性期、33科

 

取組内容

〈様々な医療スタッフへの「30人ヒアリング」〉

 糖尿病・内分泌内科(糖尿病内科)診療科長が、医局員をはじめ、次の者から、コーチングの手法を用いて、意見・フィードバックを聴取。

 ① 院内の様々なステークホルダー

   病棟看護師長、外来看護主任、栄養科長、病棟薬剤師、内科医局長、内科秘書、

   病院長、診療部長、医事課、地域連携室など

 ② 多方面の医療従事者

   近隣の糖尿病専門医、近隣医師会の非専門医など

 ※ 医局員に対するコーチングは、ランチや飲み会の席での「3分間コーチング」的な短時

  間でのコーチングのほか、業務が一段落着いたようなときに15~20分くらい、1~2か月に

  1回程度実施。

 ※ コメディカルスタッフについては、廊下ですれ違った時などのちょっとしたタイミン

  グ、「多職種合同カンファレンス」、飲み会などにおいて、話しやすい環境・雰囲気をつ

  くることに腐心。

 見えてきた課題

 ・ 糖尿病内科医師の労働時間が長い(毎朝7~8時出勤、22~23時まで病院に)

 ・ 救急外来の搬送患者が多い

 ・ 都心から離れた地方生活のストレス

 医局員たちから提案された「残業時間の多さ」解決策

 ① できる限り低血糖発作などの、事前対応可能な救急外来を受診する糖尿病患者を減らす

 ② 医療レベルのクオリティを下げることなく、日々の診療体制の効率化を図る

 ③ 医局員から看護師・薬剤師・管理栄養士といったコメディカルスタッフへのタスクシフ

  トを行う

 

〈血糖コントロールが非常に安定している患者を、積極的に近隣開業医に逆紹介〉

 (ポイント)「外来が予約で一杯」「3か月処方」は、逆紹介を積極的に行えていない

      のでは?

 〇 初年度に、約150名の血糖コントロールが非常に安定している患者を、積極的に近隣

  開業医に逆紹介

  → 近隣開業医から紹介状を書いてもらい、通常の初診外来を受診される症例数が増加

 

〈糖尿病支援入院に、医療連携室に連絡すれば、順天堂病院の外来受診することなく、

 ダイレクトに入院できるようにした〉

 (ポイント)「病床稼働率を年間を通して100%を目指すために」と考えていた

 〇 医療連携室を通じて、積極的に近隣開業医に周知

  → 近隣糖尿病専門医から、徐々に利用してもらえるようになった

 

〈夜間低血糖のリスクが高い、SU薬と30mixの使用を徹底的に削減し、夜間低血糖の起こし

 にくい薬剤に変更〉

 (ポイント)不必要な仕事が減らないと、若い医師たちは疲弊し、やりがいを感じられず、

      それが病院からの離職に繋がっていってしまう

 〇 主科入院患者だけでなく、他科入院中の糖尿病患者の血糖コントロール依頼の際にも、

  積極的に夜間低血糖の起こしにくい薬剤に変更

  → ・ 入院中の低血糖トラブルが大幅に減少

    ・ 低血糖発作による救急外来受診が著減し、時間外の対応が減少

    ・ 近隣開業医に、実践的な糖尿病の新薬の使用方法について提示

 

〈コメディカルスタッフへのタスクシフト〉

 (ポイント)コメディカルスタッフ自身の業務についてヒアリングを行い、それを踏まえて

      医局員が抱えているどの業務をどのようにシフトしていくか具体的に検討

       医局員が手間暇をかけ納得できるようなレベルまで指導

 〇 支援入院の患者向け講義を、看護師・管理栄養士・薬剤師も実施

 〇 外来・入院ともに、インスリン自己注射や自己血糖測定指導などの業務を、積極的に

  糖尿病療養指導士も実施

 〇 各種書類の記入だけでなく、退院サマリー内のデータ入力や退院処方などの入力を、

  パートで雇った当科秘書(医療事務)が実施、本当に医師の記載やチェックが必要な箇所

  のみ、医局員が実施

 〇 学会発表も糖尿病療養指導士に、症例集めやデータ管理を行ってもらい、実際に学会

  発表も実施 など

 

取組の効果

〇 当科ローテを希望する研修医の数が増加するように、研修医の労働環境や関心事項につい

 てヒアリング調査を行ったところ、その数は飛躍的に増加し、毎月コンスタントに1~2名

 来てくれるようになった。

〇 研修医数の増加や、研修医の主体的な治療参加により、上級医の業務負担が減少した。

〇 医局員全員の残業はほとんどなくなっていたにもかかわらず、糖尿病内科の収益、紹介患

 者数ともにコロナ前まで右肩上がりで増加した。

 

〔日本医業経営コンサルタント協会東京都支部主催「待ったなし!実践・医師の働き方改革セミナー(2023年2月2日)における佐藤文彦氏の講演内容、佐藤文彦氏著「コーチングで病院が変わった(2021年3月発行 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)」をもとに編集〕

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