今週のコラム第67号「タスクシフティングと人材育成・多職種連携の取組ー医療秘書の業務確立ー」(2022年8月2日号)

いきいき働く医療機関サポートWeb(通称「いきサポ」)で紹介されている取組事例をご紹介します。

今回は、「タスクシフティングと人材育成・多職種連携の取組―医療秘書の業務確立-【木村病院、福井県鯖江市旭町4-4-9、回復期機能】です。

 

取り組んだ内容

補助職(医師事務作業補助者、看護補助者等)を配置

 している。

正規・非正規を問わずすべての職員のキャリア形成支援(研修等に関する情報提供や研修等

 への職員参加の支援、子育て等と両立しながらの勤務の継続に関する相談窓口の設置や情報

 提供等)が実施されている。

法人内ローテーション。

チーム医療や多職種連携(業務分担・連携の強化等)により負担軽減を図っている。

 

取組のきっかけ、背景、取組前の問題点

 2016年3月に電子カルテを導入し、当院では医療秘書と呼んでいる医師事務作業補助者を外来診療科に配置しました。導入時には、専任の医療秘書は3名のみで、クラーク2名、医事課兼務4名の体制でスタートしました。2018年4月、医師事務作業補助体制加算に対応するため、医療秘書を医事課内で独立させて、時短パート2名含む9名が専任で配属になりました。当初は診療科ごとに配置して、それぞれがほぼ担当科のみの業務を行っていました。その後、職員から休暇がとりづらいという意見がでるようになりました。そこで全員が専任になり人的な体制が整ったこともあり、業務を平等に振分けて、各科のローテーション勤務を試みることになりました。


 医療秘書の業務は、診療科や医師により求められる業務や支援は全く異なります。また9名の医療秘書の前職は様々(他病院勤務、調剤薬局勤務、医事課出身、書類担当等)で個々のスキルがそれぞれに異なりました。そのような状況のままローテーションを導入したことで、かえって医師の負担が増加することになりました。また医療秘書の専任と同時に、時短を除く7名の医療秘書を時間外休日の外来にも配置することになりました。時間外休日の診察は非常勤の医師が担当しているため、使い慣れない電子カルテの入力等医師の補助が目的でした。そのため外科系のオーダーに慣れていない内科の医療秘書に対する対策は喫緊の課題でした。他の職種からも、外来業務を効率化するためにも、様々な診療科の知識やスキルを身に付けてもらいたいという要望もでていました。

 

 そこで、外来診療科のローテーションを円滑に進めるための課題について検討しました。

 

取組対象

  • 取組対象
    コメディカル
  • 取組の中心部署・人物
    医事課 医療秘書部
  • 取組詳細
     最初に、「各診療科の業務の見える化」と「医療秘書のマルチ化(多能工化)」の課題に取組みました。
    ・勉強会の開催
     各診療科の軸となるスタッフを講師とした勉強会を定期的に開催し、横断的な知識の習得を目指しました。
     
    ・キャリアラダーの導入
     業務のチェック式ラダーシートを自分たちで作成し、診療科ごとに異なる業務の見える化を行いました。
     
    ・書類作成スキルの向上
     書類作成は医師の業務負担の一番の原因と考えられています。当院でも大半の医師が診断書等の下書きを医療秘書に希望していました。そこで「書類作成のスキルアップと患者様への書類お渡しまでのスピードアップを図る」取組みを検討しました。
     まずは、医療秘書各人のスキルレベルを把握するための「書類作成評価チェックリスト」を作成し、レベルごとにA・Bの2チームに分けました。作成書類は書類の難易度に応じて2種類に分けて、それぞれのチームごとに担当し、難易度に応じた書類を繰り返し作成することにしました。同じ作業を繰り返すことで徐々に慣れてきて、書類を処理するスピードがあがりました。そして難易度の高い書類を作成するBチームはAチームが作成した書類のチェックも行うことにしました。従来は各個人ごとに新米秘書が作成した書類を先輩秘書がダブルチェックを行っていたため、特定の先輩職員に負担がかかっていました。
     次に、練習例題を作成して、新米秘書は自分で作成した書類を先輩秘書が作成したものと照らし合わせながら診療の合間に学べるようにしました。
    書類作成から患者様への書類お渡しまでにかかる日数の迅速化については、書類の進捗表を従来のものから改良して、書類の受取から医事課に渡すまでの日数を記載できるようにしました。それらは、週1回行うミーティングにおいて全員で進捗状況を確認し、優先順位を確認できるようにしました。
     作成する書類については、まず最初に受付で患者様から書類を預かります。書類には受付で証明が必要な期間や主治医などを付箋等に記入してもらっていましたが、受付担当者によって異なっていました。そこで「書類依頼表」を作成し、統一した様式とし、書類作成に必要な確認事項を記載してもらうようにしました。
     
    ・医師や医療秘書間等の連携強化
     医師が他の診療科医師へ他科依頼書をだされた際に、医療秘書が依頼診の内容を取り違えてしまい、他科の医師は返書を返すことができなかった、というインシデントが発生しました。そこで、依頼書について疑問があれば必ず医師もしくは担当の医療秘書に確認することを対策として周知しました。
     医療秘書は、医師から指示を受けて業務を行うため、それぞれの医師の考え方やスケジュール、医療秘書への要望等を把握することが業務を遂行する上で必要になります。医療秘書間ではそれらの情報を共有して、医師から信頼される医療秘書を目指すことを確認しました。

 

実施後の成果

・円滑なローテーションの実現

 2017年、医療秘書配置1年目に医師に行ったアンケートではローテーションを望まない医師がほとんどで、推奨する医師は0人でした。取組みを始めて3年目、2019年再度行ったアンケートでは、6割の医師に「ローテーションを行ったほうが良い」「他の診療科を知って、知識を深めて欲しい」という回答を頂くことができました。

 

 医療秘書自身も2017年のアンケートでは慣れない他診療科の業務を行うことに対する不安からローテーションに対して消極的な意見が多くありましたが、勉強会を通して他科を学ぶ機会が増えてからは、「他科についてスキルアップしたい」という意識の向上がみられるようになりました。

 

・キャリア形成支援

 勉強会では、それぞれが担当診療科の講師役を務めることで、お互いの診療科の業務を学び合うことができました。難易度の高い書類や医師からの修正された点についても、勉強会で見直しました。このような経験により業務の知識が深まり、自信につながりました。また勉強会で得た知識は、自分たちでラダーを作成する際にも大変役に立ちました。完成したラダーは、業務の目標設定に大変役に立っています。

 

・業務の効率化

 作成する書類を担当に分けたことで業務の作業効率が格段にあがりました。またチームで業務を行うようになり、30~40分かかっていた作業が数分の確認作業に軽減され、個人の負担が解消されました。

 

 半年後、再度「書類作成評価チェックリスト」を行ったところ、AチームからBチームにレベルアップする職員もいました。医師からは「医療秘書の作成した下書きを医師がどのように修正したのか追跡すると、どういう書類作成が医師から期待されているのかがわかる」ことなどのご指導も頂くことができました。

 

 当院の管理職研修では各部署ごとに目標を設定し、結果を報告会で発表しています。そこで医療秘書部の目標を、書類作成から患者様への書類のお渡しにかかる日数14日以内と設定しました。2019年4月の達成度は92.2%であったのに対して、8月は99%に目標を達成することができました。

 

・医師との連携

 新しく着任した医師は、全ての患者様が初診であり、診療に時間がかかります。経過や医学的なことはカルテをみればある程度の事は分かりますが、医療秘書から提供された患者様や患者様を囲むバックグラウンドに関する情報が診察を行う上で役に立ったと感謝されたことがありました。また、患者様にとっては担当の医師が変わることで多少の緊張感があったかと思いますが、いつもの医療秘書がそばにいることで安心いただけたのではと思っています。

 

今後の課題等について

 
・病棟業務への展開

 現在、医療秘書は医師をはじめ他職種による入院診療計画書の作成に参入し、計画書が円滑に作成できる橋渡しを行っています。今後は病棟スタッフの支援・連携を行うことで病棟業務に関する知識・意識向上に繋げていきたいと考えています。また、医師・看護職員の負担軽減・処遇改善の取組に対して、多職種との役割分担を行い、病院経営に貢献できる職員の育成を目指していきたいと思います。

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