今週のコラム第35号「育児休業からの復職を認めないことはできるか」(2021年8月10日号)

 妊娠中及び出産後1年を経過しない女性労働者については、原則として解雇が禁止されていますが、使用者が妊娠または出産等を理由とする解雇でないことを証明したときは、解雇できるものとされています(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第9条第4項)。それでは、どのような場合に解雇が認められるのでしょうか。
今回は、この問題に関連する裁判例をご紹介します。

 

 それは、育休明けの復職が認められず、退職扱いとされた保育士が、出産後1年以内の解雇であると主張して違法無効と訴えた、「社会福祉法人緑友会事件(東京地判令2・3・4労働判例1225号5頁)」です。

 

 この判決の事案の概要は、原告Xは、被告Yの経営する保育園に勤務していましたが、第1子を出産してから約10か月後に復職の意向を伝えたところ、理事長から復職させることはできない旨伝えられ、出産から1年後に退職扱いとなりました。そこで、Xが、本件解雇は出産後1年以内の解雇であり、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「均等法」と言います。)第9条第4項に違反して無効であると主張しました。

 

 これに対し、Yは、合意退職の成立を主張するとともに、仮に解雇だとしても、Xは園長や主任等の管理職に対し敵対し、他の保育士とともにグループをつくって、園長の指示、提案等に従わず、園長等に対する批判的言動を繰り返しており、このような態度は、職場環境を著しく悪化させ、業務に支障を及ぼす行為であることから解雇に至ったもので、本件解雇には客観的合理的理由と社会的相当性があると主張しました。

 

 東京地方裁判所は、これらの主張に対し、Yが主張するXの問題行動は事実と認められず、解雇相当とも評価できないとして、Yの解雇権濫用と判断しました。この判決のポイントは、次のとおりです。

 

1.退職合意の成否

 労働者が退職に合意する旨の意思表示は,労働者にとって生活の原資となる賃金の源である職を失うという重大な効果をもたらす重要な意思表示であるから,退職の意思を確定的に表明する意思表示があったと認められるか否かについては,慎重に検討する必要がある。

 Xが,理事長の説明に対し,「はい」などと述べていることは認められるものの,会話の流れを全体としてみれば,単に相槌を打っているにすぎないと解され,理事長からの復職は認められない旨の発言に対し,このようなXの発言をもって,承諾をしたと評価することはできない。(そのほか、Xは、解雇理由証明書の発行も求めています。)

 

(コメント)労働者から退職の合意を得る場合には、単に口頭による同意だけではなく、

 文書による合意をとるなど、退職の意思を明確にしておくことが必要です。

 

2.解雇の有効性

(1)解雇権濫用

 Yが主張するXの園長等に対する言動については、施設長であり,上司である園長に対するものとして,適切ではないと評価できる部分がないとはいえないとしても,現場からの質問や意見に対しては,上司である園長や主任らが,必要に応じて回答や対応をし,不適切な言動については注意,指導をしていくことが考えられるのであって,質問や意見を出したことや,保育観が違うということをもって,解雇に相当するような問題行動であると評価することは困難である。

 また,Xの言動等に対して,園長からの細かな注意,指導を行わなくなったと認められることや,Xが本件解雇以前に懲戒処分を受けたことはないことからすると,Xの園長らに対する言動に,仮に不適切な部分があったとしても,Yが主張するように園長がXに対して度重なる注意,改善要求をしていたとは認められないのであって,Xには,十分な改善の機会も与えられていなかったというべきである。

 これらのことから、本件解雇は,客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当であると認めることもできず,権利の濫用として,無効であると解される。

 

(コメント)仮に労働者に使用者に対する反抗的な態度があったとしても、解雇が認められる

 ためには、度重なる注意、指導と、解雇より軽い懲戒処分によって、十分な改善の機会を

 当該労働者に与えておく必要があります。

 

(2)均等法第9条第4項違反

 均等法第9条第4項は,妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対する解雇を原則として禁止しているところ,これは,妊娠中及び出産後1年を経過しない女性労働者については,妊娠,出産による様々な身体的・精神的負荷が想定されることから,妊娠中及び出産後1年を経過しない期間については,原則として解雇を禁止することで保障した趣旨の規定であると解される。

 また、第9条第4項ただし書は,「前項(第9条第3項)に規定する事由(妊娠または出産等)を理由とする解雇でないことを証明したときは,この限りでない。」と規定するが,上記の趣旨を踏まえると,使用者は,単に妊娠・出産等を理由とする解雇ではないことを主張立証するだけでは足りず,妊娠・出産等以外の客観的に合理的な解雇理由があることを主張立証する必要があるものと解される。

 そうすると,本件解雇には,客観的合理的理由があると認められないことは上記(1)のとおりであるから,Yが,均等法第9条第4項ただし書の「前項に規定する事由を理由とする解雇ではないことを証明した」とはいえず,均等法第9条第4項に違反するといえ,この点においても,本件解雇は無効というべきである。

 

(コメント)妊娠中及び出産後1年を経過しない女性労働者については、原則として解雇が

 禁止されていますが、例外的にその期間中に使用者が女性労働者を解雇するためには、ただ

 妊娠または出産等を理由とする解雇ではないと主張するだけでは不十分で、やはり解雇する

 だけの客観的合理的理由をしっかり証明することが必要となりますので、ご注意ください。

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