今週のコラム第27号「就業規則の不利益変更」(2021年6月1日号)

ある病院関係者から、就業規則を変更し、賃金や労働時間などの労働条件を労働者にとって不利益に変更するためには、どのような手続をとればよいでしょうかと尋ねられました。このような不利益変更は、一定の手続をとればよいというものではなく、原則として認められません。ただし、例外はあります。

今回は、この就業規則の不利益変更についてご説明いたします。

 

 使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできません。(労働契約法第9条)

 

 ただし、次のいずれも満たす場合には、使用者は、就業規則の変更によって労働条件を変更することができます。(労働契約法第10条)

 

 ①  その変更が、次の事情などに照らして合理的であること。

  ・ 労働者の受ける不利益の程度

  ・ 労働条件の変更の必要性

  ・ 変更後の就業規則の内容の相当性

  ・ 労働組合等との交渉の状況

 

   ※ 「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合

    や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されそ

    の意思を代表する親睦団体など労働者の意思を代表するものが広く含まれます。

 

 ②  労働者に変更後の就業規則を周知させること。

 

 就業規則の変更については、裁判で次のような考え方が示されています。

 

 ・ 新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働

  条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものであ

  る限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、その適用を拒否する

  ことは許されない。(秋北バス事件最高裁判決)

 

 ・ 賃金のような重要な労働条件の変更について、高度の必要性に基づいた合理的な内容

  のものである場合には、その効力を生ずる。(大曲市農業協同組合事件最高裁判決)

 

 ・ 定年を延長する代わりに給与が減額された場合において、その合理性の有無の判断に

  当たっては、①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、②使用者側の変更

  の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容自体の相当性、④代償措置その他

  関連する他の労働条件の改善状況、⑤労働組合等との交渉の経緯、⑥他の労働組合又は

  他の従業員の対応、⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して

  判断すべきである。(第四銀行事件最高裁判決)

 

 ・ 賃金体系の変更により大幅な不利益を生じさせる場合には、一方的に不利益を受ける

  労働者について不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ

  図るべきであり、それがないままに一部の労働者に大きな不利益のみを受忍させることに

  は、相当性がないものというほかはない。 一部の労働者が被る不利益性の程度や内容を

  勘案すると、賃金面における変更の合理性を判断する際に労働組合の同意を大きな考慮

  要素と評価することは相当ではないという べきである。(みちのく銀行事件最高裁判決)

 

 

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