今週のコラム第3号「解雇は簡単じゃない!」(2020年10月13日号)

最近、次のような質問を受けることが多くなりました。

 

「職員が、指示を受けた業務日誌を提出しなかったり、育児休業期間中に転職活動を行ったりして、信頼関係を損なったので、解雇したいのですが、できるでしょうか。」

 

このような職員がいると、使用者としては何とか解雇できないかと考えてしまいますよね。

 

ところが、最近、裁判所で注目すべき判決が出ました。

 

それは、労働新聞(令和2年10月12日号)によると、次のような内容のものでした。

 

「みずほビジネスパートナー(株)(中略)で働いていた労働者が解雇を不服とした事件で、東京地方裁判所(高市惇史裁判官)は解雇を無効と判断し、労働契約上の地域確認と900万円のバックペイ支払いを命じた。

 

労働者は親会社であるみずほ銀行からの転籍者で、社内での窃盗、女性社員へのセクハラで2度懲戒処分を受けたほか、業務上のミスを繰り返し、転籍後4年間で4度異動していた(4回の人事評価のうち3回が最低評価)。同地裁は業務ミスやセクハラでの労働者の落ち度は認めたものの『解雇に相当するほど重大と言えない』と指摘。客観的・合理的な理由を欠くとした。」

 

いかがでしょうか、皆さん。こんなひどい労働者であっても、裁判所は解雇を認めないんです。しかも、解雇予告なしの懲戒解雇ではなく、解雇予告手当付きの普通解雇も認めなかったのです。

 

もっとも、労働新聞の記事によれば、東京地方裁判所は、業務上のミスについて顧客に迷惑がかかったケースは少数と評価し、セクハラについても、女性社員を複数回食事に誘ったり、連絡先を渡したというもので、行為は問題ですが、程度は重大とはいえないとしたということです。

 

そもそも解雇というのは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法第16条)。

 

解雇の合理的理由とは、次の4つに大別できるとされています。

 

 ① 労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失

 ② 労働者の規律違反

 ③ 経営上の必要性に基づく理由

 ④ ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求

 

そして、社会通念上相当であると認められるかどうかについては、裁判所は、一般的には、解雇の事由が重大な程度に達しており、他に解雇回避の手段がなく、かつ労働者の側に宥恕すべき事情がほとんどない場合にのみ認められるとされているようです。

(「労働法第10版 菅野和夫著」557~559ページ)

 

つまり、職員を解雇することは、簡単ではないということです。使用者にとって、とても信頼関係を損なう行為をした職員であっても、その行為の内容が世間一般からみて「重大な程度に達している」と言えない限り、解雇は難しいです。

 

また、いきなり解雇という手段をとるのではなく、もっと軽い懲戒処分によってその職員の反省を促すなど、「解雇回避の手段」を講じたかどうかも問題となります。

 

さらに、将来争いになった場合に備え、職員の行った行為やそれに対する注意、懲戒処分などを記録にとどめておくことも大切です。

 

職員を解雇するには、それなりの理由と手順が必要となりますので、ご注意ください。

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