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ある医療機関の方から次のような質問をいただきました。
「多くの医師は、複数の医療機関を掛け持ちで働いていますが、労働時間はどのように管理すればよいのでしょうか。」
医師については、2024年4月から残業時間の上限規制が始まりますので、医療機関の経営者や労務のご担当者は、頭が痛いところですね。
厚生労働省では、このほど「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を大幅に改定しました。これは、すべての労働者に適用されるものですが、医師について特に関心が高く、厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討委員会」でも紹介されました。
このガイドラインは、副業の場合における労働時間管理や健康管理等について示したものですが、その主なポイントは、次のとおりです。
①裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当であるが、使用者は安全配慮義務、労働者は秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務を負う。
②使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無と次の事項を確認する。
・他の使用者の事業場の事業内容
・他の使用者の事業場で労働者が従事する業務内容
・労働時間通算の対象となるか否かの確認
(労働時間通算の対象となる場合)
・他の使用者との労働契約の締結日、期間
・他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
・他の使用者の事業場での所定外労働時間の有無、見込み時間数、最大時間数 など
③使用者は、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要があるが、労働者が、毎週あるいは毎月、他の使用者の事業場での所定外労働時間などを報告することは、労使双方にとって手続上の負担を伴う。
そこで、次のような簡便な労働時間管理の方法が示されている。
・副業・兼業を開始する前に、先に労働契約を締結していた使用者(使用者A)の事業場に
おける法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した使用者(使用者B)における
労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)とを合計した時間数が単月100時間未満、複
数月平均80時間未満となるようにする。
・使用者Aは、労働者に対して、このような労働時間管理の方法により副業・兼業を行うこ
とを求め、労働者を通じて使用者Bがこれに応じることによって成立する。
・使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業
場における労働時間について、それぞれ割増賃金を支払う。
医療機関においても、複数の医療機関で働く医師に対して、このような労働時間の管理を行う必要がありますが、まずは、就業規則、労働契約等に副業・兼業に関する届出制を定め、既に雇い入れている医師が新たに他の医療機関での従事を開始する場合の届出や、新たに医師を雇い入れる際の医師からの届出に基づき、医師の副業・兼業の有無を確認する必要がありますので、ご留意ください。
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