今週のコラム第131号「令和6年度診療報酬改定と賃上げ(病院におけるベースアップ評価料等の算定方法と注意点)」(2024年4月23日号)

令和6年6月診療分からのベースアップ評価料等の算定に当たっては、届出を令和6年5月2日から6月3日までに行っていただく必要があり、届出書の様式や記載例も4月18日に公開されましたので、皆様の病院では、その準備に追われていることと思います。

そこで、今回は、病院におけるベースアップ評価料等の算定方法と注意点について、確認しておきたいと思います。

 

令和6年度診療報酬改定と賃上げ

(病院におけるベースアップ評価料等の算定方法と注意点)

 

1.賃上げに係る評価の全体像

 ⑴ ベースアップ評価料

 看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、 歯科技工所等で従事する者を除く)について賃上げを実施していくための評価

【ここに注意!】

 ① 医療機関等の過去の実績、②今般の報酬改定による上乗せの活用、③賃上げ促進税制

  の活用により、令和6年度にベア+2.5%、令和7年度にベア+2.0%を目指すこ

  ととされていますが、ベースアップ評価料については、対象職種の給与総額の2.3%

  相当となるように設定されており、ベア+2.5%、+2.0%というのは、あくまで

  も努力目標であると考えられます。

 

 ① 外来・在宅医療の患者に係る評価、訪問看護ステーションの利用者に係る評価

   外来・在宅ベースアップ評価料(I)、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(I)、

  訪問看護ベースアップ評価料(I)

   ・ 届け出が必要、初再診料等に評価を上乗せ(区分は設けない)

   

 ② 賃金増率が低い場合の①への上乗せ評価

  ※ ①による対象職員の賃上げが、一定の水準(給与総額の1.2%増) に達しないと見込

   まれる無床診療所、訪問看護ステーションのみ

   外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ) 、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ) 、

  訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)

   ・ 一定の水準(対象職員の給与総額の1.2%)に達するため、評価の区分(8区分) を

    計算し、届出を行った施設について、①の評価へ上乗せ

   

 ③ 入院患者に係る評価

   入院ベースアップ評価料

   ・ 必要な評価の区分(165区分)を計算し、届出を行った施設について、入院料等に評

    価を上乗せ

   

 ★ 対象職員の賃上げの計画及び実績について、毎年報告

 ★ ベースアップ評価料においては、算定した評価は、対象職員の賃上げ(ベースアップ等)

  に用いることが必要 (令和6年度から令和7年度 への繰り越しは可)

【ここに注意!】

   令和6年度から令和7年度へ繰り越した場合、繰り越し分は、令和6年度において

  課税対象となる可能性があるなど懸念されますので、できる限り令和6年度から対象職

  員の賃上げを実施することが望ましいと考えられます。

 

 ⑵ 初再診料、入院基本料等の引き上げ

 40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置

 ★ 賃上げの計画及び毎年の実績(各年)について⑴ベースアップ評価料①~③に伴う報告や

  抽出調査等により把握

【ここに注意!】

   ベースアップ評価料の対象とならない、40歳未満の勤務医師や事務職員などの賃上げ

  の計画及び毎年の実績(各年)についても、ベースアップ評価料に伴う報告や抽出調査

  等の対象となります。

   40歳未満の勤務医師や事務職員などの賃上げについては、特に義務付けられているわ

       けではないようですが、職員間の公平性を考えれば、実施した方がよいでしょう。

 

 

2.外来・在宅ベースアップ評価料(I)

 外来医療又は在宅医療を実施している医療機関(医科)において、勤務する看護職員、薬剤師その 他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価

(新) 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(1日につき)

   1 初診時             6点

   2 再診時等            2点

   3 訪問診療時

    イ 同一建物居住者等以外の場合  28点

    ロ イ以外の場合         7点

 

[算定要件]

 ① 主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)の賃金の改善を図る体制につ

  き別に厚生労働大臣が定める施設基準に 適合しているものとして地方厚生局長等に届け出

  た保険医療機関において、入院中以外の患者に初診、再診又は訪問診療を行った 場合に、

  所定点数を算定する。

 

 ② 1初診時については、初診料、小児科外来診療料(初診時)又は小児かかりつけ診療料

  (初診時)を算定した日に限り、1日につき1回 算定できる。

 

 ③ 2再診時等については、再診料、外来診療料、短期滞在手術等基本料1、小児科外来診

  療料(再診時)、外来リハビリテーション診療料、 外来放射線照射診療料、地域包括診療

  料、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料(再診時)又は外来腫瘍化学療法診療

  料 を算定した日に限り、1日につき1回算定できる。

 

 ④ 3のイ同一建物居住者等以外の場合については、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の同一建物居

  住者以外の場合又は在宅がん医療総合診療料(ただし、訪問診療を行っ た場合に限る。)

  を算定した日に限り、1日につき1回算定できる。

 

 ⑤ 3のロについては、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の同一建物居住者の場合又は在宅患者訪

  問診療料(Ⅱ)を算定した日に限り、1日につ き1回算定できる。

 

[施設基準の概要]

 ① 外来医療又は在宅医療を実施している保険医療機関であること。

 

 ② 主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。以下「対象職員」という。)が

  勤務していること。対象職員は次に示す 職員であり、専ら事務作業(医師事務作業補助

  者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く)を行う もの

  は含まれない。 

 

主として医療に従事する職員(対象職員)
薬剤師 言語聴覚士 臨床工学技士 はり師、きゆう師
保健師 義肢装具士 管理栄養士 柔道整復師
助産師 歯科衛生士 栄養士 公認心理師
看護師 歯科技工士 精神保健福祉士 診療情報管理士
准看護師 歯科業務補助者  社会福祉士 医師事務作業補助者
看護補助者 診療放射線技師 介護福祉士

その他医療に従事する職員

(医師及び歯科医師を除 く。)

理学療法士 診療エックス線技師 保育士  
作業療法士 臨床検査技師 救急救命士   
視能訓練士 衛生検査技師

あん摩マッサージ指圧師、

 

 

 ③ 当該評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度において対象職員の賃金

  (役員報酬を除く。)の改善(定期昇給による ものを除く。)を実施しなければならない。

 

 ④ ③について、当該評価料は、対象職員のベア等(注:基本給又は毎月決まって支給する

  手当の引上げ)及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)

  等の 増加分に用いること。

 

   ただし、ベア等を行った保険医療機関において、患者数等の変動等により当該評価料に

  よる収入が上記の支給 額を上回り、追加でベア等を行うことが困難な場合であって、賞与

  等の手当によって賃金の改善を行った場合又は令和6年度及び令 和7年度において翌年度

  の賃金の改善のために繰り越しを行う場合(令和8年12月までに賃金の改善措置を行う場

  合に限る。)につ いてはこの限りではない。

 

   いずれの場合においても、賃金の改善の対象とする項目を特定して行うこと。

 

   なお、当該評価料によって 賃金の改善を実施する項目以外の賃金項目(業績等に応じて

  変動するものを除く。)の水準を低下させてはならない。

 

 ⑤ 令和6年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して2.5%以上引き上げ令和7年

  度に対象職員の基本給等を令和5年度と 比較して4.5%以上引き上げた場合については、

  40歳未満の勤務医及び勤務歯科医並びに事務職員等の当該保険医療機関に勤務する 職員の

  賃金(役員報酬を除く。)の改善(定期昇給によるものを除く。)を実績に含めることがで

  きること。

 

 ⑥ 「賃金改善計画書」及び「賃金改善実績報告書」を作成し、定期的に地方厚生(支)局長に

  報告すること。

 

3.入院ベースアップ評価料

 病院又は有床診療所において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を実 施している場合の評価 

(新) 入院ベースアップ評価料(1日につき)

   1  入院ベースアップ評価料1     1点

   2  入院ベースアップ評価料2     2点

   ↓

   165 入院ベースアップ評価料165  165点

 

[算定要件]

  ・ 主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)の賃金の改善を図る体制

  つき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合 しているものとして地方厚生局長等に届け

  出た保険医療機関に入院している患者であって、入院基本料、特定入院料又は短期滞在手

  術 等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く。)を算定している患者について、当該基準

  に係る区分に従い、それぞれ所定点数を算定す る。

 

  ※ 「主として医療に従事する職員(対象職員)」は、外来・在宅ベースアップ評価料(I)に

   同じ。

 

[施設基準の概要]

 ① 入院基本料、特定入院料又は短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く。)

  を算定している保険医療機関であること。

 

 ② 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関であること。

 

 ③ 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)及び歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)に

  より算定される点数の見込みの10倍の数 が、対象職員の給与総額(注:賞与や法定福利費

  等の事業主負担分を含み、役員報酬は除く。)の2.3%未満であること。

 

 ④ 下記の式により算出した数【B】に基づき、該当する区分を届け出ること。

  ※ 区分の数と分母は、看護職員処遇改善評価料と同じ。

 ⑤ ④について、届出に当たっては、次の別表に示した期間において【B】の算出を行うこ

  と。

   また、次の別表のとおり、毎年3、6、9、12月に上記の算定式により新たに算出を行

  い、区分に変更がある場合は算出を行った月 内に地方厚生(支)局長に届出を行った上で、

  翌月から変更後の区分に基づく点数を算定すること。

【ここに注意!】

   入院ベースアップ評価料の区分については、3か月に一度、見直しを行い、区分に変

   更がある場合には、地方厚生(支)局長に届出を行った上で、変更後の区分に基づく点数

  に算定し直さなければなりません

   類似の制度である看護職員処遇改善評価料では、適切な区分に該当せず、過大な請求

  をしていた場合に返還を求められた例が散見されたそうですので、特にご注意くださ

  い。

 

   ただし、前回届け出た時点と比較して、「対象職員の給与総額」、「外来・在宅ベースアッ

  プ評価料(Ⅰ)及び歯科外来・在宅ベー スアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込

  み」、「延べ入院患者数」及び【B】のいずれの変化も1割以内である場合におい ては、区

  分の変更を行わないものとすること。

 

   新規届出時は、直近の次の表の「算出を行う月」における対象となる期間の数値を用い

  ること。ただし、令和6年6月3日までに届 出を行った場合は、令和6年6月に区分の変

  更を行わないものとすること。 

 ⑥ 当該評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度において対象職員の賃金(役

  員報酬を除く。)の改善(定期昇給による ものを除く。)を実施しなければならない。

 

 ⑦ ⑥について、当該評価料は、対象職員のベア等(注:基本給又は毎月決まって支給する

  手当の引上げ)及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等

  の増 加分に用いること。

 

   ただし、ベア等を行った保険医療機関において、患者数等の変動等により当該評価料に

  よる収入が上記の支給 額を上回り、追加でベア等を行うことが困難な場合であって、賞与

  等の手当によって賃金の改善を行った場合又は令和6年度及び 令和7年度において翌年の

  賃金の改善のために繰り越しを行う場合(令和8年12月までに賃金の改善措置を行う場合

  に限る。)につ いてはこの限りではない。

 

   いずれの場合においても、賃金の改善の対象とする項目を特定して行うこと。

 

   なお、当該評価料に よって賃金の改善を実施する項目以外の賃金項目(業績等に応じて

  変動するものを除く。)の水準を低下させてはならない。

 

 ⑧ 「賃金改善計画書」及び「賃金改善実績報告書」を作成し、定期的に地方厚生(支)局長に

  報告すること。

 

 ⑨ 常勤換算2名以上の対象職員が勤務していること。ただし、医療資源の少ない地域に所

  在する保険医療機関にあっては、当該規定 を満たしているものとする。

 

 ⑩ 当該保険医療機関において、社会保険診療等に係る収入金額の合計額が、総収入の80%

  を超えること。

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