今週のコラム第129号「無理にA水準にしていませんか?~「隠れB水準」医療機関の問題~」(2024年4月2日号)

「隠れB水準」医療機関

いよいよ本年も4月に入り、”医師の働き方改革”が本格施行となりました。医師の労働時間が短くなり、診療体制が縮小するのではないかと心配する向きもあります。

なかでも、本来B水準の指定を受けるべきところ、さまざまな事情により、A水準を選択した医療機関が、医師の労働時間を無理に短くすることで、救急車の受入れを断ったりしていないでしょうか。

今回は、この「隠れB水準」医療機関の問題を取り上げます。

 

無理にA水準にしていませんか?~「隠れB水準」医療機関の問題~

 

 1⃣ 「隠れB水準」医療機関

   B水準の指定を受けるためには、医療機関勤務環境評価センターの評価を受けなければ

  ならず、そのためには、膨大な資料を短期間に作成する必要がありました。

 

   また、B水準の指定を受けると、勤務間インターバルが義務づけられるため、限られた

  医師数のもとでは、うまく勤務シフトが組めないという問題もあります。

 

   このような事情から、本来B水準の指定を受けるべきところ、何とか医師の労働時間を

  やりくりして、A水準を選択した医療機関があるのではないでしょうか。

 

   このような医療機関のことを、ここでは「隠れB水準」医療機関と呼んでいます。

 

 2⃣ 診療体制の縮小の可能性

   A水準となりますと、令和6年度の36協定においては、医師の年間の時間外・休日労働時

  間の上限は960時間以内となり、それを超えて時間外・休日労働をしますと、労働基準法

  違反で、罰則が適用される可能性があります。

 

   そのため、「隠れB水準」医療機関では、医師の労働時間を短くするため、土曜休診など

  診療時間の短縮、救急車の受入れ拒否、手術件数の制限など、診療体制を縮小すること

  が心配されます。

 

   この診療体制の縮小は、地域医療体制の確保において重大な問題であるばかりでは

  なく、その医療機関にとっても、医療収入の減少によって経営上の問題ともなりかねませ

  ん。

 

 3⃣ 令和6年度の途中でもB水準の指定は可能

   これまで36協定は、年度途中での変更はできませんでしたが、厚生労働省は、令和6年

  2月26日に次のように「医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A」を改正しました。

 

  「地域の医療体制の確保のためにB水準等の特例水準の指定を受けるなどといったやむを得

  ない事情がある場合であれば、対象期間の途中であっても、既に届け出た36協定の内容を

  特例水準に合わせたものに変更し、再度届出することは可能である。」

 

   つまり、令和6年度の途中でも、B水準の指定を受けて、36協定の変更を届け出れば、

  医師の時間外・休日労働時間を年間1860時間以内とすることができます。

 

   ただし、その場合の時間外・休日労働時間の起算日は、変更前の36協定の起算日とな

  り、時間外・休日労働時間数も変更前の時間数に通算されますので、ご注意ください。

 

 4⃣ 令和6年度にやるべきこと

   A水準の医療機関で、本年3月末に年間の時間外・休日労働時間数が960時間を超えた医

  師がいる場合には、令和6年度中に年間960時間を超えないよう労務管理を徹底する必要が

  ありますが、それが難しい見通しであれば、早めに見切りをつけて、B水準の指定申請の準

  備に着手する必要があります。

 

   というのは、B水準の指定を受けるためには、医療機関勤務環境評価センターの評価

  受けた後、各都道府県の医療審議会の意見を聞く必要があり、例えば、埼玉県の場合、9

  月に医療審議会が予定されているので、評価センターの評価期間が4か月だとすると、5月

  までには、評価センターの評価受審を申し込む必要があるからです。

 

 5⃣ 「診療体制の縮小」をするぐらいなら、B水準の指定を受けた方が得策

   B水準というのは、何かブラック企業のようなイメージがあるかもしれませんが、「診療

  体制の縮小」をするぐらいなら、B水準の指定を受けた方が得策ではないでしょうか。

 

   なぜなら、B水準の指定を受ければ、年間960時間から1860時間までの時間外・休日労働

  時間のバッファーを作ることができるので、急激に診療体制の縮小を行わなくても、じっ

  くり計画的に、変形労働時間制の活用、タスクシフト・シェア、ICTの活用、医療DXの推

  進等により、年間960時間以内を目指せばよいからです。

 

   ぜひ各医療機関の実情を踏まえ、よくご検討ください。

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