今週のコラム第118号「医師の働き方改革シリーズ第33回『主治医グループ制を活かした働き方改革の推進』」(2023年12月5日号)

医師の働き方改革を進めるうえで、「患者への献身的な貢献が医師としての美徳」という考え方が障害になっていませんか。

今回は、あくまで患者のための働き方改革と考え、主治医グループ制を活かした働き方改革を推進している事例をご紹介いたします。

 

【主治医グループ制を活かした働き方改革の推進】

(柏崎総合医療センター(新潟県柏崎市))

※ 400床 職員数 486名(医師 47名、看護師 282名、他) 急性期

 

取組前の状況

【医師不足と旧態依然とした医師に対する認識の解消】

 • 自院が所在する柏崎市では、人口10万人当たりの医師数は150人と、都道府県別「充足

 率」最下位の新潟県の199人を大きく下回っている。

 • 2次救急病院であるが、県内の名だたる3次救急病院に匹敵する救急の受け入れを行ってお

 り、少ない人員での救急対応には工夫が必要である。

 • 病棟からの呼び出し状況は、10~19床の有床診療所を主治医1人で運営している状況と同

 様である。病棟からの呼び出し理由として多いのは死亡確認であり、その数は年間100例

 程、呼び出しの3分の1程を占めている。その他の主な理由は、転倒転落患者の連絡や、入院

 患者数が多いことによる様々なトラブルへの対応である。これらの病棟で発生するトラブル

 は、専門的なものというより各診療科共通のことが多く、交替制が可能と考えた。

 • このような医師不足の中、ワークエンゲージメントの高い医師によって、休むことが悪で

 あるという雰囲気や、過労を誘発するほど仕事をしなければ成長しないといった認識が形成

 されてしまっていた。また、医師だけでなく医療専門職種や患者の中にも「患者への献身的

 な貢献が医師としての美徳」といった考えが定着しており、改善の必要があった。

 

取組の内容

【消化器内科ワンチームとしたゆるい主治医グループ制】

 主治医制に慣れている医師へのグループ制導入による影響を最小限とするため、土日休日のみ当番制を導入した。

 • 平日は夜間も含め、当面は主治医制を維持する。

 • 休日の主治医定期回診は廃止したが、当面、気になる症例の管理に顔を出すことを妨げな

 いこととしている。

 • 治療手技を行う場合は医師2名の参集が必要となるため、1st.call、2nd.callを設定し、一

 方は上級医とすることで、若い医師の指導も兼ねることが可能となっている。病棟・救急外

 来からの電話は1stがすべて対応し、2ndは手技の介助、コンサルトや手のかかる診療の補助

 を担当している。

 主治医グループ制の導入により、医師の生活の質が向上した。

 • 365日の出勤が無くなり、プライベートを充実させることが可能となった。また、医師が

 余裕を持てるようになり、優しい気持ちで患者と接するようになれた。

 • 他の医師の治療内容等を知ることで知識をブラッシュアップし、他の医師の診療姿勢を見

 ることで、医師のプロフェッショナリズムについても考察ができる。

 

【当直明け医師の帰宅を「強制」し支援する業務体制】

 当直明けは午前で帰宅できるよう、当番医制度や検査・手術の予定管理を推進している。

 • 医療過誤の要因にもなる当直明けの勤務を無くすため、当直で入院させた患者の急変や死

 亡時対応は、可能な限り当番医で担当する体制とした。

 • ESDや予定ERCPを当直の翌日午後には入れないよう、医師自身が当直の予定を確認する

 よう促している。

 当直明けの半日での退勤を強制する環境を整備している。

  まじめな医師ほど退勤しづらい状況となるため、部長が宣言し、全員が無視できない環境

 を整備した。

 当直明けに半日で退勤ができることにより、病院経営・医療安全の両面でプラスの効果が期待できる。

 • 主治医としての入院への心理的ハードルが下がることで、入院症例の増加につながり、

 院経営・医療安全の両面においてメリットがある。

 • 当直へのハードルが下がることで、医師確保にも役立っている。

 

【タスク・シフト/シェアの推進】

 タスク・シフトを専門家同士の協働という意識で推進することで、医師の負担軽減だけでなく、患者利益も追及できる。

 • タスク・シフトは医師から他職種への業務の押し付けではなく、患者の利益に資するため

 の専門家同士の協働という視点が重要である。

 • 特定行為研修修了看護師を活用することで、患者を待たせることなく治療が可能となり、

 医師・患者双方にメリットがある。

  医師事務作業補助者は、書類の代行作成、電子カルテ代行入力、検査・処置スケジュール

 の管理等を実施している。医師でも看護師でもない職種として、患者の率直な訴えを拾い上

 ることもある。

 

【休日完全フリー化実現のための検討会やSNS利用】

 休日を完全にフリーにするため、検討会やSNS、電子カルテによる情報共有を重視している。

 • 休日完全フリーのためには情報共有が重要であり、チーム内で何でも話せる環境を構築し

 ている。また情報漏洩の可能性が低い医療機関専用スマートフォン(”日病モバイル”)の

 ャット機能を活用し、タイムリーな情報共有等を行っている。

 • 電子カルテ上の記載を統一するようにしており、これにより患者の状態が急変した場合、

 治療方針の共有を迅速に行うことができる。初めから完璧なルールを作成することは困難で

 あるため、随時改良するという方針で推進している。

 

【医師個人、チームとしての意識改革】

 働き方改革は患者にも利益があるという考えを周知している。

  休むことに対して罪悪感を抱く医師もいるため、あくまで患者のための働き方改革と考え

 ることが重要であることを周知している。

 「なかよし体制」の導入や各種セミナーの受講推奨により円滑な人間関係を構築している。

 • 心理的安全性を確保し、みんなが「なかよく」仕事できる環境作りを行うため、「なかよ

 し体制」を構築している。部長は常に話しかけやすい雰囲気としており、チーム内で何でも

 言い合える雰囲気を醸成している。良いことだけでなく指摘等も遠慮なく行い、不満を拾い

 上げ、改善すべき点に直ちに取り組んでいる(業務・検査数の調整、当直の交換、すぐに

 様々な相談に乗る、等)。

 • 大学の講義や企業人事等、医師以外が行う講演の視聴等を通じ、円滑な人間関係の構築に

 努めている。特に、診療科のトップの意識改革が最も重要であり、ノンテクニカルスキルセ

 ミナー等の受講を促し、アンガーマネジメントやリーダー論等についても知識を深めるよう

 推進している。

 働き方改革推進の上で、自己研鑽とのバランス、全員の協力が得られるか、他科との兼合い等の課題がある。

 • 働き方改革を推進する上で課題となるのは、自分で診たい重症例がある際の取り扱いと自

 己研鑽をどう捉えるかという点である。

 • 1人でも「休まない」という医師がいると、制度が崩壊してしまうため、全員の協力が不

 可欠である。

 • 「消化器内科は医師数が多いから働き方改革が可能だ」という声が他科から出ることもあ

 り、少人数の診療科のサポートを実施する等、他科との兼合いも重要となる。具体的には、

 少人数の診療科で入院患者の容体急変が予想される場合、休日の対応を消化器内科が引き受

 けている。

 

取組の効果

【論文執筆時間の捻出】

 • 従前は多忙すぎるが故に論文の執筆時間を確保できていなかった。各種働き方改革の取組

 の成果として論文を執筆する余力が生まれ、英文での症例報告が2件がアクセプトされた。

 

【業務から解放された休日の増加】

  働き方改革の開始前は、全員がそれぞれ主治医制で365日オンコールに対応しており、病院

 から一度も呼ばれることのない休みは年間5日の夏休みのみであった。取組の開始により、

 業務に関与しない休暇は年間57日~81日へ増加した(月4~6日(休日による変動)+夏休み

 9日間)。

 

【有給取得率の増加】

 全職員の平均有給取得日数が2019年度の10日から2021年度には11.1日へ向上している。

 

〔「勤務環境改善に向けた好事例集(令和5年3月 令和4年度厚生労働省委託事業)」より〕

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