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医師の働き方改革を進めるうえで、医師自身はもちろん、タスクシフトを受ける看護師や医師事務作業補助者の意識改革も大変重要です。
今回は、意識改革を重視し、多職種チームでの活動により、相互理解を醸成するとともに、タスク・シフトされる側のことを考えたタスク・シフトを推進している事例をご紹介します。
【意識改革を重視した働き方改革の推進】
(九州がんセンター(福岡県福岡市))
※ 411床 職員数 870名(医師 115名、看護師 400名、他) 急性期
取組前の状況
【働き方改革は医療の質向上の契機】
• 医療の質の向上が最大の経営改善策である一方、医療安全管理、職員満足度、業務改善等
の健全な経営なしでは医療の質の向上は図れない。
• 医療従事者の働き方改革は、医療の質向上のための取組の延長であるという意識を持ち、
改革を行うこととした。例えば、タスク・シフトは、シフト先へ一任して問題ないレベルま
で事前に教育を行い、これが質の向上へ繋がっている。
• また、当院の一番の特徴は、全部門を仲間として捉え垣根を低くしていることとなってい
る。タスク・シフト/シェアについても、シフト先を理解・尊重して行っている。
【医師事務作業補助者に関する課題】
• 指揮・命令系統が不明確、給与が均一でない、教育体制が整っていない、達成度評価が実
施されていない、他の医療機関でも医師事務作業補助者の募集が増加したことによる人員確
保の困難等、医師事務作業補助者の活用について多くの課題を抱えていた。
• 例えば、医師事務作業補助者は、業務内容や人間関係について不安や悩みを抱えており、
モチベーションが低下した結果、離職が増加し、2018年には離職率23%となっていた。
【取組のステップ】
• 当初の大きな問題点は、職員が労働基準法を知らないことであった。診療科の責任者から
順に説明していき、認識を広げていった。
• その後、2019年の時間外IC中止、当直医による看取り代行の開始を皮切りに、働き方改革
への様々な取り組みを推進した。
取組の内容
【タスク・シフト/シェアの推進】
多職種チームでの活動により、相互理解を醸成し、職員間の垣根が低くなっている。
• 「オール九州がんセンタープロジェクト」と称し、30程度の多職種チーム(働き方改革推
進チーム、チーム医療推進チ ーム等)が活動を行っており、各チームがそれぞれの活動を発
表し、相互理解を深めている。
• 当初は院長がリーダー及びメンバーを指名していたが、現在では殆どのチームが、職員が
自主的に手を挙げて組成されたチームへと置き換わっている。
• こういった取組により職員間の垣根が自然と低くなっており、結果としてタスク・シフト
や働き方改革が上手く推進できている。例えば、放射線技師の多能工化について発表される
と、他部門へも波及し同様の取組が始まった。
医師の業務のうち、タスク・シフト/シェア可能と考える業務をリストアップし、見える化することで実施につなげる。
• 国立病院機構の取組の一環で、医師の業務のうち、タスク・シフト/シェア可能な業務
(5部門36項目)をリストアップし、計画を策定した。リストアップする業務は、「診療の
質の向上に資するかどうか」を基準として選定した。
• 各項目についてチェックリストを作成し、経過を確認した。36項目全てのシフトを達成し
たわけではないが、目標として設定したことでタスク・シフトについて各部門への認識付け
ができた。
タスク・シフトされる側のことを考えたタスク・シフトを推進している。
• タスク・シフトの取組は看護部が最も多く、造影剤や抗がん剤のルート取りは現在ではす
べて看護師が行っている。このルート取りにおいても品質を確保する必要があるため、院内
資格を設定、研修を実施し看護師を育成した。
• 医師からのタスク・シフトを受ける看護師からも、看護補助者へのタスク・シフト/シェ
アを同時に推進し、診療の補助と看護に専念できる職場環境づくりを図っている。
• 看護補助者は、外来、手術室、病棟に配置している。勤務時間は、平日9:00~の6時間勤
務となっている。
• 医師から医師事務作業補助者へのタスク・シフトについては、診療科・病棟ごとに医師事
務作業補助者への依頼を行う医師を指定し、調整ラインを一本化している。各医師がバラバ
ラに依頼を行うと、医師事務作業補助者の混乱や業務負担増となり、退職の原因にもなるた
めである。
• 看護職員負担軽減計画に関する会議を定期開催しており、院長、副院長、臨床研究センタ
ー長、統括診療部長、事務部長、看護部長、薬剤部長、医療情報管理室長、医療安全係長、
企画課長、管理課長、副看護部長が参加している。
医師事務作業補助者の活用にあたり、質・モチベーションの向上を目指した取組を実施している。
• 医師事務作業補助者の質・モチベーション向上に取り組むため、まずはコアメンバー(副
院長、統括診療部長、事務部長、管理課長、DA(Doctor’s Assistants)リーダー2名)によ
り、情報収集と分析を実施した。これにより、医師事務作業補助者のタイムリーな状況把
握、さらにはコミュニケーションの向上につながった。
• 医師事務作業補助者45名が一堂に会す、DA定例ミーティングを月に一度30分で開始した。
定例ミーティングでは、現状の把握・連絡、コミュニケーションの向上を目指した。
• 入職時に実践的教育を実施し、また、図書館等の充実、講習会・学会への参加促進を行っ
ている。
• 達成度評価を実施し、結果を個人にフィードバックしている。達成度評価は個人に責を問
う趣旨ではなく、医師事務作業補助者全体としてレベルが上がっているかの評価として活用
している。
• 医師事務作業補助者と医師を対象に、アンケートを実施している。医師事務作業補助者へ
は仕事内容への満足度等を質問し、医師へは医師事務作業補助者が業務負担軽減に役立って
いるか等を質問している。
• 学会認定の資格取得を推奨し、取得者の給与水準を向上させている。また、4時間勤務者
のうち、能力が認められかつ本人が希望する場合には、6時間勤務へ変更している。
【複数・チーム主治医制】
医師の働き方改革推進において、診療体制に関する医師自身の考え方のパラダイムシフトが重要である。
• 2019年10月から、働き方改革チームによる各診療科へのヒアリングを実施した。ヒアリン
グ結果を受けて、施設の診療体制としての共通認識を共有し、2020年10月には方針を決定
し、院長からのトップダウンで診療体制の見直しを推進した。
• 全診療科の共通システムとして稼働させないと成功はできないという意識付けと責任感の
醸成が重要である。
• 院内の体制変更と同時に、患者・家族側への周知も必須である。
診療体制の改革として、複数・チーム主治医制、休日当番制を導入した。
• 進捗について診療科間で差が出てしまうことは許容するが、必ず実現すべきこととして認
識づけることが重要であるため、定期的に進捗アンケートで進捗を報告させ、公開し、診療
科間で効果や課題等を共有しつつ推進している。
複数・チーム主治医制、休日当番制の導入と並行して、診療科別の勤務時間の設定を承認した。
• 外科は朝の症例カンファレンスが必要である等、診療科ごとに勤務時間にも特徴があるた
め、診療科ごとに勤務時間を設定することを可能とした。
【時間外勤務の実態把握と現状の共有】
時間外勤務の実態把握に先駆けて、各診療科長の意識改革を実施した。
• 各診療科長へ労働基準法や36協定について、超勤は診療科長の業務命令として行われてい
ること等を理解してもらうことから開始した。
• 診療科長への説明は、管理課とともに、副院長や統括診療部長等の幹部医師が率先して実
施した。
面談等により、超過勤務状況や年休取得状況をフィードバックし、タイムリーな改善につなげている。
• 2018年からは、医師の超過勤務状況を管理課で把握し、36協定の順守状況とともに、月
に1度、各診療科長・医師へフィードバックしている。年休取得状況の報告も2020年より開
始した。
• 超勤が多い医師には、診療科長とともに、幹部医師と管理課長で面接を行い、極端に超勤
が多い医師は産業医との面談を実施している。
超過勤務は自己申告制であるが、申請漏れ防止のために、電子カルテやPCのログをチェックしている。
• 超過勤務の管理簿は手書きでの自己申告制であるため、超過勤務の申請漏れを防止するた
めに、実態との齟齬がないか、電子カルテやPCのログをチェックすることで点検している。
全てのログをチェックするわけではなく、2週間に一度、一部をサンプリングして管理課に
て実施している。
• 勤怠管理システムは国立病院機構のモデル機関として、2022年11月より先行導入してい
る。
【その他の取組】
病棟マネジメント・業務マネジメント
• 病状説明の原則勤務時間内実施とその周知
• 長時間手術の多い麻酔科医の疲弊を防ぐため、手術を行う際は2週間以上前に連絡し、同
日実施のものがあれば調整している。
• 従来看護師の業務であった、夜間手術実施後の手術室清掃について、清掃業者を利用
子育て・家族介護等の環境の整備
• 院内保育所の設置
取組の効果
【時間外勤務の減少】
• 常勤医師の月平均時間外勤務は、2021年度から2022年度にかけて減少している。
• 特に時間外勤務の多かった診療科長以上の職員に関しては、半減以下となっている。
【土日当番制の浸透】
• 土日の平均出勤者割合について、2021年9月には30.7%であったが、2022年6月には20.6%
となっている。
今後の展望
• 診療科や医師個人により、勤務時間や時間外勤務の量にムラがあり、多くなっている特定
の診療科、医師への対応が課題となっている。
• ICTは費用がかさむため、メリットとコストのバランスがとれたICT活用を随時検討する。
現在医療情報部ではRPAを準備、検討中であり、データ抽出等を簡単にすることを企図して
いる。
• 医局にて勤務時間外に係るカンファレンス等の実施調査を行ったところ、始業時間前にカ
ンファレンスが行われている状況が分かった。毎朝のカンファレンスの勤務時間内実施につ
いて検討する。
• 現在研修中である抗がん剤のルート確保など、特定行為研修修了看護師の更なる活用を図
る。
• 医療法改正により放射線技師などが実施可能な業務範囲が拡大することを受け、各医療関
係職種で研修受講を推進しており、更なるタスク・シフトを検討する。
〔「勤務環境改善に向けた好事例集(令和5年3月 令和4年度厚生労働省委託事業)」より〕
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