今週のコラム第115号「医師の働き方改革シリーズ第30回『当直体制等の制度の見直し・周知徹底と、ICT活用による業務効率化の推進』」(2023年11月7日号)

これまでは、多忙な病院であっても、症例が豊富で様々なことが出来れば、医師にとっての魅力にもつながっていた面がありましたが、最近は、医師たちの意識も変わってきたのではないでしょうか。また、仕事→当直→仕事と連続で働くのが当たり前と考えられてきましたが、そういった認識も若い世代には馴染まくなっています。

今回は、こうした背景から、当直体制等の制度の見直し・周知徹底と、ICT活用による業務効率化を推進した事例をご紹介します。

 

【当直体制等の制度の見直し・周知徹底と、ICT活用による業務効率化の推進】

(津山中央病院(岡山県津山市))

※ 515床 職員数 990名(医師 125名、看護師 506名、他) 急性期

 

取組前の状況

【2017年までの問題点】

  当直業務を全て勤務時間に含めない宿直扱いにしてきたが、病棟当直医を除く当直医の業

 務は時間外労働とみなされる内容であった。

 • 当直明けは可能なら午後から帰宅してもよいとアナウンスしてきたが、強制ではなく意識

 が浸透しなかった

 • 救急病院であり、時間外に手術・検査・処置等を行う事例が多数存在していた。

 • タイムカードは無く、時間外労働は自己申告に任せていた。

 • 自己研鑚、カンファレンス、セミナーの扱い等、時間外労働の基準が一部曖昧であった。

 

世代による意識の変化】

 • 岡山県北には救急や高度医療を担う病院が少なく、当院に一極集中している。このことか

 ら多忙な病院ではありながら、症例が豊富で様々なことが出来る魅力にもつながっていた。

 • 医師たちの意識も変わってきて、多忙すぎるとの悪評が立ち始めた。当院は大学からロー

 テーションで医師の派遣を受けており、以前は希望者が多かったが、こういった評判により

 敬遠する医師が増えた

 • これに加え、従来は仕事→当直→仕事と連続で働くのが当たり前と考えられてきたが、そ

 ういった認識も若い世代には馴染まず、変革の必要性を感じ様々な取り組みを開始した。

 • 宿直扱いとしていた当直を勤務として認め、カンファレンス等も時間外労働としてカウン

 トすることで、まずは正しい勤務実態の把握に努めた。その後、当直体制の見直しから着手

 した。

 

取組の内容

【当直体制の変更】

 当直医の勤務体制の区分を変更し、当直医の業務を通常業務と認定した。

 • 病棟当直およびSICU補助以外の当直医の業務を通常勤務と認定し、2連続性の通常勤務に

 組み込む体制を導入した。

 新しい当直体制を機能させるため、院内への周知、当直の割り振りの工夫、複数主治医制の推進を実施している。

  当直終了後は原則帰宅と定め、当直明けは休みと院内に周知することで、帰宅しやすい雰

 囲気を醸成している。

 • 当直の割り振りにおいては、外来や手術・検査予定を考慮することとしている。

 • 可能な限り、患者は複数の医師で受け持つようにし、責任の分散を図る。

 

【時間外労働と自己研鑽の区別】

 時間外労働と自己研鑽の明確な区別を行った。

 • カンファレンスは、指導する上級医は時間外勤務とし、指導される側は時間外勤務としな

 こととする等、区分を明確に定義した。

診療報酬・インセンティブの付与】

 診療報酬制度の基準に該当しない科に対する補助や、時間外緊急手術、呼び出し等にインセンティブを付与した。

  H26年の診療報酬改定によって、時間外・深夜・休日の緊急手術に対する加算が行われた

 ため、時間外手当とは別にインセンティブを設定した。ただし、加算の基準をクリアしてい

 たのは脳外科のみであったため、他科には病院の財源を利用してインセンティブを支給

 た。

 • インセンティブは夜間・休日緊急手術手当、救急等呼出手当及びボーナス加算から成り、

 ボーナス加算は院長ファンドとして予算を確保している。

 

管理職研修会の実施】

 毎年実施する管理職研修会で、働き方改革について検討し、研修会後の取組推進につなげた。

  毎年、管理職約100名が参加する合宿で様々なテーマについて議論し、病院の方向性の検

 討や問題意識の共有等を行っている。現在は新型コロナウイルス感染症の影響により合宿形

 式を中断し、院内に分散して実施している。

 • 2018年、2019年、2020年は、医師、看護師、コメディカルの「働き方改革」をテーマに

 設定し、合宿後、ワーキンググループを設立し、毎月の会議で対策を検討してきた。

 

【ICTの活用】

 Web会議や勤怠管理システムにとどまらず、積極的に様々なICT活用に取り組んでいる。

 • Web会議システム(Skype、Zoom等)については、他病院への普及前から製薬メーカーの

 提案により、当院をモデルケースとした試験運用を実施。勤怠管理システム(Dr. JOY)の

 他、積極的にICT活用に取り組んでいる。

【救急外来ER dayの導入】

 救急外来ER dayを導入し、内科・外科の当直医師の負担軽減と、日勤帯の医師の増加を目指している。

  2020年から、内科、外科の医師の負担軽減のため、救急集中治療科の医師が、内科・外科

 の救急診察業務を担当する取組を開始した。2021年からは水曜日の夜間帯、土曜日に拡充し

 ている。

 • 救急外来において、専門医が自身の専門外の当直患者を診ることへの評判が悪く、また、

 日勤帯で活躍してもらいたい専門医が当直を行うと、翌日が休みとなるため効率的に働いて

 もらうことができない。そのため、ファーストタッチは救急科の医師が診た上で、専門の処

 置が必要な場合のみオンコールで専門医を呼び出すことで、専門医の当直勤務を減らすこと

 ができている。

 

【その他の取組】

 労務管理の方法

 • 残業管理システムのソフト作成

 病棟マネジメント・業務マネジメント

  カンファレンス、各種委員会の時間内実施

 • 病状説明の時間内実施

 子育て・家族介護等の環境の整備

 • 認可保育園の院内設置

 • 病児保育対応

 スタッフの健康維持、管理、増進体制の整備

 • 産業医による面接

 

取組の効果

【当直明け時間外労働時間の推移】

 • 当直明けの残業時間は減少傾向にあり、2022年3月にはピーク時の半分程度まで削減してい

 る。

【時間外労働月80時間以上の人数】

  時間外労働は、時期等で波はあるが、全体としては減少傾向にある。

 • 2021年度にA水準から逸脱している医師は4名であり、時間外労働は最高で1345時間であ

 る。

今後の展望

  救急外来ER dayの拡充(将来的には救急外来を救命センターだけで運用)

 • 整形外科の改革推進

  ➢ 緊急手術を時間内に実施できるよう、緊急用手術枠を確保

  ➢ クラークによる業務補助推進

  ➢ 他科との協力推進

  ➢ 当直医の協力のもと、救急外来での呼び出し減少

 • 深夜帯の宿日直許可取得

  自己研鑽と労働との線引き、労働時間の把握はさらに検討が必要

 • カンファレンス、研修会の扱いを検討

 • タスク・シフト/シェアの推進

 • DXプロジェクトの推進

 • 時間外労働を希望する研修医やスタッフのモチベーション 維持

 • 人員確保

 

〔「勤務環境改善に向けた好事例集(令和5年3月 令和4年度厚生労働省委託事業)」より〕

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