今週のコラム第111号「医師の働き方改革シリーズ第26回『業務実施体制の見直しも含めたタスク・シフト/シェアや兼業先の支援等による改革推進』」(2023年10月3日号)

大学病院等で、兼業先の医療機関がなかなか宿日直許可を取得できず、困っているところも多いのではないでしょうか。

今回は、宿日直許可を取得予定の兼業先に対し、事務支援を実施するとともに、業務実施体制の見直しも含めたタスク・シフト/シェアを推進している大学病院の事例をご紹介します。

 

【業務実施体制の見直しも含めたタスク・シフト/

シェアや兼業先の支援等による改革推進】

(大阪医科薬科大学病院(大阪府高槻市))

※903床 職員 1,906名(医師 564名、看護師 883名、他) 高度急性期

 

取組前の状況

【法改正をきっかけとして取組を開始】

 • 医師の働き方改革関連法の改正以前から勤怠システムはあったものの、医師がタイムレコ

 ーダーを打刻するルールが徹底されておらず、大学病院内の在院時間が十分に把握できてい

 なかった。実際に、医師のタイムレコーダーへの打刻率は約50%と十分に浸透している状況

 ではなかった

 • 診療科長が各科の勤怠管理担当者を任命し、勤務実態の把握・管理の強化を図ったが、

 割の浸透は十分ではなかった

 • 宿日直許可のない宿日直の時間は労働時間としてカウントされることとなり、兼業先を含

 めた労働時間の把握が必要となったため、まずは大学病院におけるタイムレコーダーへの打

 刻を推進し、労働時間の把握を進めることとした。

 • 兼業先は自己申告により勤務時間内の把握はしていたが、勤務時間外の兼業は病院全体で

 把握していなかった。そのため、法改正を一つの契機と捉え、時間外の兼業の実態把握にも

 取り組むこととした。

 • 各診療科長から任命された働き方改革責任者が中心となって各科の取組を進めてもらっ

 た。

 • 医師はじめ病院職員が医師の働き方改革を積極的に取り組んでもらうため、外部講師によ

 る講演会等を2回開催し、意識改革を促した

 

【新機能の新設】

 • 2016年3月に中央手術棟を開院し、医師・看護師・薬剤師・臨床工学技士・中央材料室・

 物流・施設・事務によるチーム医療を実践し、24時間断らない手術室を運営する必要があっ

 た。

 • また、2022年7月に、病院の新本館A棟を開院し、その一部に救急救命センターを新設する

 こととなっていたため、人材の確保・育成、業務の棚卸や適正配分等、新しい医療サービス

 の提供体制を検討する必要があった。

 

【コロナ妊婦の受入】

 ・2021年8月より、 「コロナ感染症妊婦専用病床」を開設し、大阪府の周産期における新型

 コロナウイルス感染症対策に、貢献できる体制の構築が必要となった。

 

取組の内容

【兼業先の宿日直許可申請の事務支援】

 全医師に対し、働き方の実態調査を実施し、正確な勤務実態の把握と対策を講じた。

 • 2021年10月に1週間の期間で働き方の実態調査を、兼業先も含めて実施し、この1週間の

 結果を48倍にし、 2021年度の勤務実績とした。

 • 兼業の把握については、各医師からどの病院で兼業を行っているか申請してもらい、各兼

 業先に、派遣している医師の働き方を確認し、宿日直を行っている場合は宿日直許可取得の

 有無も確認した。

 医師の自己申告に基づき、兼業先に宿日直許可の取得状況等の照会を行った。

 • 兼業先の宿日直許可取得状況(有/無/準備中/予定なし等)は許可有が15%、許可無が

 77%であった。

 • 許可の有無が時間外・休日労働の上限規制に大きな影響を与えることを知らない兼業先も

 多かった。

 • 宿日直帯の実情を兼業先に聞き取りを行うと、「寝当直」も多く、取得可能と思われるケ

 ースも多いことがわかった。

 • ただ、申請準備や実際の申請等の事務手続きの不安に加えて、勤改センターや労基署に相

 談すること自体、躊躇している兼業先も多く、本院からの協力を期待していることもわかっ

 た。

 • そのため、兼業先へ宿日直許可取得を促すことと並行し、事務支援等も行う旨の文書を病

 院長名で発信した。

 宿日直許可を取得予定の兼業先に対し、事務支援を実施している。

 • 兼業先には、宿日直許可を取得したいが、規模が小さく事務方の体制が整っていないケー

 スや顧問社労士がいないケースも多いことがわかった。

 • 当院の働き方改革推進本部では社会保険労務士資格を取得している事務職員を中心に兼業

 先から宿日直許可の手続きや許可基準に関する問い合わせへの対応や大阪府医療勤務改善支

 援センターの利活用などを促している。

 • 11月時点で事務支援中の医療機関は25、うち申請準備中・審査結果待ち・許可取得済は

 10となっている。

 • 現在は、派遣医師数の多い医療機関、地域医療に影響の大きい医療機関を中心に支援を行

 っている。

 

【医師事務作業補助の活用】

 タスク・シフト/シェアの推進のために、クラークの改革を行った。

 • 医事課を中心に、属人化していた体制を組織化し、業務管理を行う正職員を配置した。

 • 組織化を推進しつつ、人員の増加にも取り組んでおり、医師事務作業補助体制加算は、以

 前は30対1で運営していたが、2022年4月からは15対1で運営を行っている。

 • 派遣職員であるスタートクラークから、レギュラークラーク、スマートクラーク、正職員

 であるスーパースマートクラークまでキャリアパスを設定している。

 • また、手術室の業務にもクラークを配置している。

 

【手術室の運営高度化】

 手術室に関することは、中央手術部運営委員会にて決定する。

 • 月に1度、各診療科から必ず1名参加し、委員会を開催している。

 • 委員会の内容は必ず議事録に残し、周知を徹底している。

 • 手術室は、手術室枠(午前・午後・手術室番号)で運用し、手術室占有率が低い診療科か

 らフリー枠や手術を実施できる他の診療科に変更することで、手術終了時間の短縮・緊急手

 術対応に役立っている。

 可能な限り日勤帯で手術を終了するために臨機応変に手術室を組み替え、予定手術・緊急手術の対応を行っている。

 • 中央手術室の入口から一番近い手術室を、超緊急時にも対応できるように常に準備してい

 る。

 • 関連病院も含めシミュレーションセミナーを実施することで緊急時の対応を早めている。

 • 術前診察・術後診察は、麻酔科医が病棟に行くのではなく、術前診察室・術後診察室を手

 術室の中に配置している。

 

【薬剤関連業務の実施体制見直しとタスク・シフト/シェア】

 病棟薬剤業務への先駆的な取組により、チーム医療とタスク・シフト/シェア等を推進している。

 • 薬剤部の体制を見直し、チーム制を導入した。

 ① タイムスタディ調査による業務量把握 ②業務プロセスの分析・評価 ③動線の可視化/業務

 チェックリスト作成 ④効率的人員配置 ⑤業務スケジューリングの工夫

 • 医薬品の適正使用を推進し、服薬指導業務から病棟薬剤業務へシフトした。

 ① 薬物治療のPDCAサイクルを循環

 ② 医療の質・安全確保の要として薬剤師を配置し、医薬品安全管理体制を確保

 • アンプルピッカー、薬品管理、画像監査、混注監査、注射薬調製ロボット等、患者とスタ

 ッフを守るシステムを導入した。

 • 薬剤師業務の一部を薬剤補助員にタスク・シフトすべく、医薬品SPDを導入した。

 • 部署配置薬の適正使用・適正在庫推進によりインシデント減少、コスト削減を図った。

 あらゆる領域の医療チームに薬剤師が参画(なんでも薬剤師の実践)する体制とした。

 • ジェネラリストとして標準的・横断的な薬剤師業務の実践及びスペシャリストとして様々

 な領域で指導・専門・認定薬剤師など認定資格を取得した。

 • 結果的に、医師や看護師の業務負担を軽減し、タスク・シフト/シェアを実現した。

 

【その他の取組】

 子育て・家族介護等の環境の整備

 • 診療科ごとの復職支援プログラム作成と広報

 • レジデントを含めた医師・看護師対象短時間勤務制度の導入

 • 内閣府の企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の活用

 • 院内保育、一時保育、病児保育の更なる充実

 働き方改革の推進体制の整備

 • 病院長を筆頭に、病院のみならず法人全体からメンバーを集めた働き方改革推進本部を法

 人直下に設置

 • 医師・看護師・薬剤師など多職種からなる業務改善推進委員会と連携

 • 各科に勤務管理担当者、働き方改革責任者を配置

 

【取組の効果】

【病院機能評価・米Newsweek誌への掲載】

 • 2022年1月に「日本医療機能評価機構 病院機能評価 一般病院3」に認定された。

 • 2021年には米Newsweek誌のベストホスピタルに大阪医科大学病院として選出され、

 また2022年にも同誌のベスト ホスピタルに大阪医科薬科大学病院として選出された。

 

今後の展望

 • 2022年5月、大阪府医療勤務環境改善支援センターから「特別支援事業医療機関」に認定さ

 れたことに伴い、毎月定期的にアドバイザーと面談して適切なアドバイスを受けながら、

 取組を継続していく。

 • 各科から自主的に出された時短策について、各科でPDCAを回しながら、必要に応じて事務

 局がサポートし、推進していく。

 • 各科の取組と併せて病院全体の取組項目を設定し、会議等で周知を図る。また、次年度

 以降、取組結果について各科からの発表会等を検討している。

 • 働き方改革推進本部から各科責任者に対して勤務計画表の作成支援、連続勤務時間や月

 次の勤務時間の管理、情報のフィードバック等を開始する。

 • 2022年秋より、新たな勤怠管理システムの試験導入を開始し、来年度から本格導入予定。

 兼業先の宿日直許可の有無等も入力可能とする予定である。

2022年秋に自院の宿日直許可を申請する予定である。

兼業先が宿日直許可の申請をする際には、引き続き事務支援を行う。

 

〔「勤務環境改善に向けた好事例集(令和5年3月 令和4年度厚生労働省委託事業)」より〕

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