今週のコラム第95号「医師の働き方改革シリーズ第12回
『医師の働き方改革が医療収入の増加につながった事例』」
(2023年4月25日号)

医師の働き方改革が目的化してしまうと、診療時間の短縮など地域医療の崩壊につながってしまいます。医師の働き方改革は、医師が医師免許を持つ者にしかできないことに集中し、病院全体の生産性を向上させ、収益を上げることなどを実現するための手段と考えるべきだと思います。

今回は、医師の働き方改革が医療収入の増加につながった事例をご紹介します。

 

はじめに

 来年4月に向けて、各病院では医師の時間外・休日労働を短くするための取組みが進められていると思いますが、医師の働き方改革が目的化していませんか。

 医師の労働時間を短くすることが目的になってしまうと、医師の増員ができない限り、診療時間が短くなり、高度な医療技術を伝承するための時間が確保できなくなるなど、地域医療が崩壊するという声をよく聞きます。

 医師の働き方改革は、目的ではなく、次の3つの目的を達成するための手段だと考えます。

 ⑴ 医師の健康を確保し、安全な医療を提供すること。

 ⑵ 医師は医師免許を持つ者にしかできないことに集中し、看護師をはじめとするコメディ

  カルもそれぞれの専門性を活かせる業務に従事するとともに、医師事務作業補助者をでき

  る限り活用することによって、ムリ・ムダを排除して、病院全体の生産性、収益力を向上

  させること。

 ⑶ 医師、コメディカル、事務職すべてのスタッフのワークライフバランスを確保して、リ

  フレッシュと自己研鑽のための時間を増やすとともに、多様な勤務形態によってスタッ

  フの価値観の多様化を進め、医療サービスの水準を向上させること。

 

 今回は、上記の3つの目的のうち、2つ目の収益力の向上という目的を達成した事例をご紹介します。

 

【医師事務作業補助者へのタスク・シフティング】

(医療法人財団 荻窪病院(東京都杉並区)

  ※ 病床数252床 職員数536名(医師104名、看護師271名、他) 急性期、24科

 

 取組内容

 〈医師事務作業補助者の配置〉

  はじめは5人からスタートしたが、加算等も活用し、現状は40人を超える体制に成長

  ・2008年 5名で加算申請

  ・2009年 病棟・外来クラークを医師事務作業補助者に職種転換

  ・2010年 加算15対1を申請、医師事務作業補助者の呼称を「MA:メディカルアシスタン

   ト」に統一 → 外来支援業務開始

  ・2015年 MA40人体制に

 

 〈タスク・シフティングをする上での課題・対策〉

  ・医師事務作業補助者の導入時に行っていた業務は、生命保険会社の入院証明書作成業務

   が主

  ・業務内容を拡大する上での問題点として、医師と共通言語での情報共有ができないこと

   が最大の課題

   この課題を解決するには、医師と共通言語での情報共有ができるようになるための臨床

   教育は必要

 

 〈医師事務作業補助者への臨床教育〉

  導入初期は医師による現場教育を実施 → 1日中医師とともに過ごす

  (具体例)

  ・外来診療:診療録の記録・修正添削

  ・回診同行:経過観察・処置・方針の記録

  ・手術・心臓カテーテル・内視鏡:見学及び記録

  ・合同カンファレンス参加:治療方針決定過程の記録

  ・外来書類の作成:医師による添削を実施

    ⇓

  医師事務作業補助者自らが教育カリキュラムを作成 → 新たな教育体制に移行

 

 〈臨床教育の結果、医師事務作業補助者へタスク・シフトした業務〉

  主に以下の3種類の業務を医師から医師事務作業補助者へシフトした

  ① 書類作成業務

  ② 診療支援業務

  ③ 記録業務

 〈医師事務作業補助者の採用〉

  採用競争力の向上に向けた早期かつ多面的なアプローチ、病院見学者への説明の工夫等を

  行うことで、医師事務作業補助者の獲得につなげた

  ・採用競争力の向上のために、専門学校に対して早期の採用アプローチを行い、人材紹介

   の調整やOBによる説明会の実施等の採用活動を実施

  ・求職者の病院見学の際には、育成やキャリア開発、待遇について説明を行い、理解を深

   める採用活動を実施

   → 病院や業務の概要だけでなく、待遇や育成についても明確に伝えることで求職者の

     懸念を軽減

  ・採用候補者向けにHP・SNS等のWeb媒体を活用

   → 様々な媒体を活用して広報を行うことで、人材募集に関する情報発信に目を向けて

     もらう機会の増加

  ・地域の方に向けては、医師事務作業補助者について院内のモニターや広報誌等で紹介

   → 潜在的な求職者も含む地域の方が医師事務作業補助者に関する認知・理解を深める

     ことで、求職者にとって有力な就職先の選択肢として認識

 

 取組の効果

 〈医師の業務量の減少〉

  ・医師に対してのアンケートの結果、医師事務作業補助者導入後、医師本来の業務である

   診察、検査、手術等が充実し、特に診療に充てる時間が増加したと評価されている。

 

 〈業績変化〉

  医師事務作業補助者導入により、以下のような業績変化が見られた

  ・紹介患者数、退院数、救急件数、手術件数の増加

  ・産科分娩件数・内視鏡件数の増加

  ・平均在院日数の減少

  ・医療収入の増加

 

 〈医師事務作業補助者による収益〉

  医師事務作業補助者による収入は増加傾向である

  ・医師事務作業補助体制加算収入

  ・医師事務作業補助者による書類作成収入

 

 〈医師事務作業補助者の人数の増加〉

  採用競争力の向上に向けた取組により、医師事務作業補助者の人数を増加させることに成

  功した。

  育休・産休、時短勤務等の一定の入れ替わりはあるものの、体制を維持することに成功し

  ている。

  ・医師事務作業補助者数

   5名 → 38名

 

 〔「勤務環境改善に向けた好事例集(令和4年3月 令和3年度厚生労働省委託事業」より〕

 

 

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