今週のコラム第91号「医師の働き方改革シリーズ第8回『変形労働時間制とは』」(2023年3月22日号)

医師の時間外労働時間数を短くするために有効な方法のひとつに、変形労働時間制があります。

今回は、この変形労働時間制について、就業規則の規定の仕方を含め、解説します。

 

まず、下の図をご覧ください。従来の労働時間では、決まった時間に出勤し、決まった時間に退勤するため、そこからはずれた時間(赤い枠で囲った部分)はすべて時間外労働となり、下の図では、1週間の時間外労働が28時間となっています。

 

これに対し、予定されている外来や手術にあわせた変形労働時間制を適用すると、1週間の平均の所定労働時間が40時間(従業員が10人未満のクリニックの場合は、44時間。以下同じ。)以内であれば、ある1日の所定労働時間を8時間、別の1日の所定労働時間を19時間とすることも可能となり、その結果、下の図では、1週間の時間外労働が8時間に短縮されています。

(注)1年単位の変形労働時間制を採用した場合には、1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間、1年間の労働日数の限度は280日となります。

 

このように、あらかじめ向こう1か月の外来や当直などの予定が決まっている医療機関では、変形労働時間制は、医師の時間外労働時間を短くするために、大変有効な制度です。

1.1か月単位の変形労働時間制の採用方法

 変形労働時間制には、いくつかの種類がありますが、ここでは多くの医療機関において活用

できる1か月単位の変形労働時間制についてご説明します。

 

 1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40

時間(常時使⽤する労働者数が10人未満のクリニックなどは44時間。以下同じ。)以内となる

ように、労働日及び労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時

間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能になる制度です(労働基準法第32

条の2)。

 

 1か月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定または就業規則で、次に示す事

項について定めてください。

 なお、締結した労使協定や作成・変更した就業規則は、所轄労働基準監督署に届け出てくだ

さい。

 

 ① 対象労働者の範囲

  法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要が

 あります。

 

 ② 対象期間及び起算日

  対象期間及び起算日は、具体的に定める必要があります。(例:毎⽉1日を起算日とし、

 1か⽉を平均して1週間当たり40時間以内とする。)

  なお、対象期間は、1か⽉以内の期間に限ります。

 

 ③ 労働日及び労働日ごとの労働時間

  シフト表などで、②の対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定め

 る必要があります。その際、②の対象期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間を

 超えないよう設定しなければなりません。

  なお、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。

 

 ④ 労使協定の有効期間

  労使協定を定める場合、労使協定そのものの有効期間は②の対象期間より⻑い期間とする

 必要がありますが、1か⽉単位の変形労働時間制を適切に運⽤するためには、3年以内程度

 とすることが望ましいでしょう。

 

2.労働時間の計算方法

 対象期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないためには、対象期間中の

労働時間を、次の式で計算した上限時間以下とする必要があります。

 ◎ 上限時間の計算方法

  上限時間=1週間の労働時間(40時間)×対象期間の歴日数/

対象期間が1か月の場合の上限時間

週の法定労働時間

月の歴日数
28日 29日 30日 31日
40 160.0 165.7 171.4 177.1
44 176.0 182.2 188.5 194.8

                                                    (単位:時間)

 

3.割増賃金の支払い

 1か⽉単位の変形労働時間制を採⽤した場合、割増賃⾦の⽀払いが必要な時間外労働となる

時間は次のとおりです。

 

 ① 1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超

  えて労働した時間

 ② 1週間については、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間

  を超えて労働した時間(①で時間外労働となる時間を除く)

 ③ 対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①または②で時間外労働と

  なる時間を除く)

 

4.就業規則の規定の仕方

 1か月単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則等において変形期間の起算日や

各日の始業・終業の時刻及び変形期間内の各日・各週の労働時間を明確にしておくことが必要

です。

 

【就業規則規定例】

① 年間休日カレンダー方式

(労働時間及び休憩時間)

第○○条 所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制とし、1か月

 を平均して1週間40時間以内とする。

2 各日の始業時刻、終業時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、休憩時間帯につ

 いては、業務の必要により各所属において設定することとし、業務の都合その他やむを得な

 い事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。  

始業時刻 終業時刻 休憩時間
午前9時 午後6時 1時間

(休日)

第○○条 休日は、前条の1か月につき最低9日(ただし、1か月の歴日数が28日の場合は、8日

 とする。)とし、暦年ごとに作成する年間休日カレンダーのとおりとする。

2 次に掲げる日は、前項の休日とする。

 ⑴ 毎週日曜日

 ⑵ 第2・第4土曜日

3 年間休日カレンダーは、毎年12月中に各職員に明示する。

 

② 月間シフト表方式

(労働時間及び休憩時間)

第○○条 所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制とし、1か月

 を平均して1週間40時間以内とする。

2 各勤務シフトにおける各日の始業時刻、終業時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。

 だし、休憩時間帯につては、業務の必要により各所属において設定することとし、業務の

 都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。

  A 始業 午前8時   終業 午後5時   休憩時間 1時間

  B 始業 午後4時   終業 午前9時   休憩時間 2時間

3 各職員の勤務シフトと休日の割り振りは、各所属において毎起算日の1週間前までに決定

 して、月間勤務シフト表を各職員に示す。

(休日)

第○○条 休日は、前条の1か月につき最低9日(ただし、1か月の歴日数が28日の場合は、8日

 とする。)とし、同条の月間勤務シフト表のとおりとする。

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