今週のコラム第87号「医師の働き方改革シリーズ第4回『医師の労働時間を短くするための手順』」(2023年2月7日号)

医師の時間外・休日労働時間が年960時間をわずかに超え、何とか960時間以内にとどめ、B水準の指定を受けずに済ませたいと考えている医療機関もあるのではないでしょうか。

今回は、医師の労働時間を短くするための手順について、いくつかの病院の実例をもとに、ご説明したいと思います。

 

1.まずやるべきこと~医師の勤務実態の把握

 まず、自院の医師について、外勤先を含め、その勤務実態を把握する必要があります。制度的には、自院の出勤・退勤時間の把握と時間外労働の申請と承認が必要であり、外勤先の労働時間については、医師の自己申告による把握が必要となります。

 しかし、これまで特に外勤先の勤務実態や、当直時間帯の勤務実態については、必ずしも十分把握できていない医療機関が多いのではないでしょうか。

 そこで、厚生労働省では、祝日等のない標準的な1週間を対象に、医師の自己申告によって、外勤先や当直時間帯の勤務実態を把握し、それによって1年間の時間外・休日労働時間を推計する「医師の勤務実態調査支援ツール※」を無償で提供しています。

 ※このツールは、各都道府県医療勤務環境改善支援センターに連絡すれば無償で提供されますが、弊社にご用命いただきましても、ご提供させていただきますので、ご興味のある方は、弊社にご連絡ください。

2.自己研鑽を労働時間とするかどうかのルール決め

 第1図は、「医師の勤務実態調査支援ツール」を用いて、ある病院の医師の勤務実態を調査した結果の例です。この例では、赤い枠で囲った部分が自己研鑽の時間となっており、それをすべて労働時間としてしまっているために、時間外労働時間が相当長くなってしまっている事例です。

 所定労働時間中に行う自己研鑽は、当然すべてが労働時間となりますが、問題は、終業時間のあと、院内に残って、診療ガイドライン等の勉強、勉強会の準備、論文執筆、上司等の診療や手術の見学・手伝い等を行っている場合に、それが労働時間に該当するかどうかです。

 一般的には、研鑽が労働時間に該当するかどうかについては「使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」によって判断されることになりますが、やはり各医療機関において、当該医師の経験、業務、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえて、当該医師の上司がどの範囲を現在の業務上必須と考え指示を行うかによって、ルール決めをする必要があります。

 ある医療機関においては、「本人の資格取得を目的とする論文執筆及び学会発表の準備等」は、労働時間に該当しないとされていますが、本人の資格取得を目的とするものであっても、例えば診療報酬上の施設基準で求められている資格の取得を目的とする場合、医療機関の指示がないと言い切れるか、微妙な場合もあると考えられます。

 いずれにしても、各医療機関、さらには各診療科において、どの研鑽が労働時間に該当し、どの研鑽が労働時間に該当しないかについて、よく話し合い、一定のルール決めを行い、すべての医師に周知徹底していただくことが重要です。

 このことにより、第1図の事例では、時間外労働時間を相当減らすことができると思います。

3.宿日直許可がとれるかどうか

 次に、第2図は、副業・兼業先を含め、宿日直許可がとれるかどうか、検討する必要がある事例です。この事例では、宿日直時間中、ほとんどが待機状態となっており、宿日直許可がとれる可能性があると思われます。

 宿日直許可については、前回の今週のコラム第86号で詳しくご説明しましたが、宿日直時間中に医師が具体的にどのような業務に、どの程度の時間、従事しているか、把握する必要があります。最近、宿日直許可に関する労基署の対応も随分協力的になってきていますので、宿日直時間の勤務実態を1か月ぐらい確認したうえで、できる限り早く管轄の労基署へご相談に行かれることをお勧めします。

 また、副業・兼業先においても、宿日直に従事している場合には、当該医師を通じて、外勤先の医療機関に対し、宿日直許可を受けているかどうか、確認する必要があります。医師の時間外労働規制においては、外勤先の労働時間も通算して考えなければなりませんので、宿日直時間中の勤務実態によっては、宿日直許可をとっていただければ、その分当該医師の労働時間を短くすることができます。

 このように、宿日直許可がとれる場合には、許可をとることによって、第2図の事例の医師の時間外労働時間は相当減らすことが可能です。

4.次に行うべきこと

 そのほか、医師によっては、医療機関での滞在時間が長くなる傾向の方がいらっしゃるのも事実です。そのような医師については、私の経験では、やはり院長または副院長から、当該医師の上司またはご本人に対して、直接事情をお聞き取りいただき、時間外労働時間数の削減についてご協力をいただくことが最も効果的だと思います。

 以上のような取組を進めてもなお、医師の時間外労働時間数を短くする必要がある場合には、下の表でお示しした、主な労働時間短縮のための方策をご検討ください。

 変形労働時間制は、あらかじめ向こう1か月の勤務予定が明らかにできる医療機関においては、労働時間短縮に大変有効な方策だと言えます。

 タスク・シフト/シェアについては、令和3年9月30日に厚生労働省医政局長から発出された「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について(下に掲載したリンクをクリックしてください)」という通達において、現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務 の具体例が示されていますので、ここにあげられた業務でまだタスク・シフト/シェアができていないものがないか、確認されてはいかがでしょうか。

 また、これまで、担当の患者に対しては、あくまでも主治医が全責任を持つという考え方が一般的だったと思いますが、今後、すべての医師の健康を確保し、質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供していくためには、そのようなパラダイムを転換し、下の表にあるような複数主治医制を導入したり、土日祝日の病棟業務等は当番医で対応することを基本とし、主治医は必要に応じて対応するようにしたりすることをぜひご検討いただきたいと思います。

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