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1 適切な労務管理のために把握すべきこと
医師の労働時間については、実態を正確に把握していく必要があります。医師の適切な労務管理のために把握すべきことは、次のとおりです。
〇 B・C水準の検討、36 協定の適切な締結も含めた労働
基準法の遵守のために必要な項目
• 主たる勤務先での労働時間
• 副業・兼業先での労働時間(医師の自己申告で把握します)
• 労働時間に該当する診療外業務の時間(研鑽、研究、教育等)
• 「宿日直中」(主たる勤務先及び副業・兼業先を含む)の労働状況
• 副業・兼業先の宿日直許可の有無
〇 休息の確保状況の把握のために必要な項目(連携 B・B・C-1・C-2水準対象医療機関に
おいては、追加的健康確保措置の実施記録を残す意味でも必要となります。)
• 連続勤務時間
• 勤務間インターバルの時間
〇 医師の労働時間短縮・勤務環境改善のために把握すべき項目
• 休日(暦日で 24 時間連続して勤務から解放されている日)の有無
• 効率化や削減が可能な業務の時間
• タスクシフト・タスクシェアが可能な業務の時間
2 現状確認チェックリスト
医師の労働時間の把握においては、特に次のチェックリストに掲げている点に留意して、
現状を確認する必要があります。
① 副業・兼業先について
□ 副業・兼業先の労働時間をあらかじめ把握する仕組みとするとともに、労働時間の実績を
少なくとも月に1回は把握する仕組みがある
□ 副業・兼業先の労働時間を含めた勤務計画となっている
② 宿日直について
□ 「宿日直許可のある宿日直」と「宿日直許可のない宿日直」とを区別して管理し、労働
時間として正しい把握を行っている
□ 副業・兼業先の労働時間を含めた勤務計画となっている(副業・兼業先の宿日直許可の
状況も把握し、時間を含めていればよい)
□ 宿日直の時間の適切な取り扱いを行った上での勤務計画となっている
③ 研鑽について
□ 医療機関において自己研鑽のルールを定めている
□ 労働ではない時間(主に自己研鑽)を把握することができる
□ 医師に対して、勤怠管理や当人が実施すべき内容(就業開始、退勤時刻の申告、時間外
勤務の自己研鑽部分のルール確認等)について、少なくとも年に 1 回周知されている
3 医師の勤務実態の調査
下図の調査票により、標準的な1週間の医師の実際の働き方を自己申告してもらい、この1週間を基に1年間(48 週)の労働時間を推計して検討を行います。
この調査票は、厚生労働省が推奨している医師の勤務実態調査支援ツールの調査票です。
本来、医師の勤務実態を調査するためには、 1 か月、半年とある程度の期間とすることが
望ましいですが、医師への負担、分析にかかる労力等を考えると現実的とは言えません。
そこで、この調査票では、祝日等がない標準的な 1 週間で調査を実施し、そのデータを基に検討することとしています。
この調査票は、医師に自己申告していただくものですが、その記入方法は、
① まず、医師が「どういった業務をしていたのか」を項目別に 30 分区切りで矢印を
記入する
②また、 主たる勤務先での業務だけでなく、副業・兼業先での業務の状況も記入する
という点がポイントとなります。
この医師の勤務実態調査支援ツールでは、上図の調査票に各医師が記入した内容をもとに、
それぞれの医師の1週間の労働時間を下図のグラフにプロットしていきます。
このグラフの横軸は、主たる勤務先での1週間の労働時間を示し、縦軸は副業・兼業先での
1週間の労働時間を示しています。
副業・兼業先の労働時間を含めて、医師の1週間の労働時間がどのゾーンに入るかによって
その医師の労働時間をどの程度短縮すべきかが確認できるというわけです。
以上のデータをもとに、
・ 各医師にどの水準を適用していくのか(医療機関としてどの水準の指定を受けるのか)
・ 連携B・B・C-1・C-2水準を適用する場合、追加的健康確保措置をどのように行って
いくのか
・ 時間外・休日労働が年 1,860 時間を超えている医師がいる場合、年 1,860 時間を超える
のはなぜなのか
・ 時間外・休日労働が年 1,860 時間を超えている医師について、時間外・休日労働を
年 1,860 時間以内にするにはどのようにアプローチしていくのか
を把握することで、実際の対応について検討していくことが可能となります。
しかしながら、調査票の集計・分析結果から得られる情報には限界があり、結果を踏まえて
医師に詳細をヒアリングすることで、より具体的に課題を認識し、実効的な方策を検討する
ことができます。
例えば、宿日直中の診療業務の時間の割合が低い場合については、医師の意識としてもいわ
ゆる「寝当直」であるか、又は今後「寝当直」と考えられる体制に移行できそうかの確認等を
行うことで許可取得の可能性の判断につながります。
また、負担の大きい業務や他職種にタスク・シフト/シェア可能と思われる業務を確認する
ことで、今後の業務改善やタスク・シフト /シェアについて具体的に検討することができます。
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