賃金・人事評価制度の改革を検討する場合、すべてが職員にとって有利になることは少なく、どうしても職員の不利益になる点があることが多いと思います。
その場合、賃金・人事評価制度を「労働者の不利益」に一切変更できないでしょうか。
たしかに、労働契約法第10条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」とされています。
しかし、一定の条件を満たせば、「労働者の不利益変更」が認められています。
すなわち、労働契約法第10条では、「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」は、「労働者の不利益変更」を認めています。
筆者が経験した「労働者の不利益変更」に、退職金の減額変更があります。
このケースでは、医療法人の経営状況が悪化し、これまでの高額の退職金制度を維持することが困難となり、減額変更したわけですが、次のような点に配慮して、実現にこじつけました。
① 労働者の受ける不利益の程度
減額後の退職金の金額を、全国の同規模の病院の平均と同程度としたこと。
② 労働条件の変更の必要性
現行の退職金制度を継続すると、病院経営に重大な影響を与えること。
③ 変更後の就業規則の内容の相当性
①と同じ。
④ 労働組合等との交渉の状況
理事長自ら職員全員に対して、病院の経営状況を含め、真摯に説明し、全職員が同意書に署名・押印をしたこと。
⑤ その他の就業規則の変更に係る事情
制度変更時点での既得権を保障し、退職を間近に控えた職員には経過措置をとるとともに、退職金の減額と同時に、定年年齢の引上げを行ったこと。
このように、賃金・人事評価制度の改革が「労働者の不利益変更」に該当する場合には、より慎重な検討が必要となりますので、ご注意ください。
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