今週のコラム第37号「医師の勤務実態の把握方法」(2021年8月31日号)

医師の時間外労働規制が始まるまでにあと約2年半となり、年間の時間外・休日労働時間数の合計が960時間を超える医師がいる病院は、早急に医師の勤務実態を把握し、必要な対策に着手する必要があります。

そこで、今回は、厚生労働省から公表された「医師の勤務実態把握マニュアル」をもとに、医師の勤務実態の把握方法について解説します。

 

1.適切な労務管理のために把握すべきこと

 医師の労働時間については、実態を正確に把握していく必要があります。医師の適切な労務管理のために把握すべきことは、次のとおりです。

 

〇 B・C水準の検討、36 協定の適切な締結も含めた労働基準法の遵守のために必要な項目

  主たる勤務先での労働時間

 • 副業・兼業先での労働時間(医師の自己申告で把握します)

 • 労働時間に該当する診療外業務の時間(研鑽、研究、教育等)

 • 「宿日直中」(主たる勤務先及び副業・兼業先を含む)の労働状況

 • 副業・兼業先の宿日直許可の有無

 

〇 休息の確保状況の把握のために必要な項目(連携 B・B・C-1・C-2水準対象医療機関に

 おいては、追加的健康確保措置の実施記録を残す意味でも必要となります。)

  連続勤務時間

 • 勤務間インターバルの時間

 

〇 医師の労働時間短縮・勤務環境改善のために把握すべき項目

  休日(暦日で 24 時間連続して勤務から解放されている日)の有無

 • 効率化や削減が可能な業務の時間

 • タスクシフト・タスクシェアが可能な業務の時間

 

2.労働時間の把握において留意すべきこと

 医師の労働時間の把握においては、特に次のチェックリストに掲げている点に留意して、現状を確認しましょう。

【現状確認チェックリスト】

① 副業・兼業先について

  副業・兼業先の労働時間をあらかじめ把握する仕組みとするとともに、労働時間の実績を

  少なくとも月に1回は把握する仕組みがある

 □ 副業・兼業先の労働時間を含めた勤務計画となっている

 

② 宿日直について

  「宿日直許可のある宿日直」と「宿日直許可のない宿日直」とを区別して管理し、

  労働時間として正しい把握を行っている

 □ 副業・兼業先の労働時間を含めた勤務計画となっている(副業・兼業先の宿日直許可の

  状況も把握し、時間を含めていればよい)

 □ 宿日直の時間の適切な取り扱いを行った上での勤務計画となっている

 

③ 研鑽について

  医療機関において自己研鑽のルールを定めている

 □ 労働ではない時間(主に自己研鑽)を把握することができる

 □ 医師に対して、勤怠管理や当人が実施すべき内容(就業開始、退勤時刻の申告、時間外

  勤務の自己研鑽部分のルール確認等)について、少なくとも年に 1 回周知されている

 

3.医師の勤務実態の調査

 調査期間については 1 か月、半年とある程度の期間で医師の勤務実態を把握することが望ましいですが、医師への負担、分析にかかる労力等を考えると非現実的と言わざるを得ません。

よって、今回ご紹介する方法は、祝日等がない標準的な 1 週間で調査を実施し、そのデータを基に検討することとしています。

 下図1 が勤務実態把握の調査票です。調査票の記入方法は次のとおりです。

  医師が「どういった業務をしていたのか」を項目別に 30 分区切りで矢印を記入する

 ② 主たる勤務先での業務だけでなく、副業・兼業先での業務の状況も記入する

 調査においては、「1週間」の医師の実際の働き方を自己申告する形となっています。繁忙期、閑散期等があると思いますが、まずはこの1週間を基に1年間(48 週※1)の労働時間を推計して検討を行います。

 

 1週間を年間に換算した場合、検討の基準となる時間は

A 水準の上限である時間外・休日労働年 960 時間

:総労働時間週 60 時間(法定労働時間 40 時間+時間外・休日労働 20 時間)

連携 B・B・C-1・C-2水準の上限である時間外・休日労働年 1,860 時間

:総労働時間週 80 時間※2(法定労働時間 40 時間+時間外・休日労働 40 時間)

となります。

 

 ※1 祝日等のない標準的な 1 週間の調査結果から 1 年の労働時間を推計しますが、年間で

  祝日が 16 日あることやその他の休暇(年末年始等)があることを考慮して、1 年を 48 週

  として推計します。

 ※2 1 年を 48 週とした場合、総労働時間週 78 時間 45 分(法定労働時間 40 時間+時間外・

  休日労働 38時間 45 分)で時間外・休日労働年 1,860 時間となりますが、ここでは近似値

  として総労働時間週 80 時間を基準とします。

 

 ただし、時間外労働時間の算出は、正確には1日単位で8時間を超えた時間、週単位で 40 時間を超えた時間として算出します(変形労働時間制やフレックスタイム制の場合は、この限りではありません。)。また、法定休日(週1回又は4週に4日)に労働した時間は休日労働として取り扱う必要があります。(各医療機関の勤務形態にあわせて時間外・休日労働時間を集計することが可能であれば、より実態に即した分析が可能です。)

 

 まずは、各医師について、当該 1 週間の勤務実態を参考にどの水準に相当するのかを確認します。

 

 下図は、横軸を主たる勤務先の労働時間、縦軸を副業・兼業先の労働時間として、各医師の1週間の労働時間をプロットした場合に、どの位置に分布している医師がどの水準に相当するのかを表したものです。図中に引かれた赤い線が時間外・休日労働年 960 時間ライン、⿊い線が時間外・休日労働年 1,860 時間ラインとなり、下図の⻩⾊部分の連携 B・B・C-1・C-2水準を超過している医師を、⿊い線より左側の年 1,860 時間以内とすることがまず第1に行うべきこととなります。

 以上のデータをもとに、

  各医師にどの水準を適用していくのか(医療機関としてどの水準の指定を受けるのか)

 ・ 連携B・B・C-1・C-2水準を適用する場合、追加的健康確保措置をどのように行って

  いくのか

 ・ 時間外・休日労働が年 1,860 時間を超えている医師がいる場合、年 1,860 時間を超える

  のはなぜなのか

 ・ 時間外・休日労働が年 1,860 時間を超えている医師について、時間外・休日労働を

  年 1,860 時間以内にするにはどのようにアプローチしていくのか

を把握することで、実際の対応について検討していくことが可能となります。

 

 しかしながら、調査票の集計・分析結果から得られる情報には限界があり、結果を踏まえて医師に詳細をヒアリングすることで、より具体的に課題を認識し、実効的な方策を検討することができます。例えば、宿日直中の診療業務の時間の割合が低い場合については、医師の意識としてもいわゆる「寝当直」であるか、又は今後「寝当直」と考えられる体制に移行できそうかの確認等を行うことで許可取得の可能性の判断につながります。また、負担の大きい業務や他職種にタスク・シフト/シェア可能と思われる業務を確認することで、今後の業務改善やタスク・シフト /シェアについて具体的に検討することができます。

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