今週のコラム第5号「契約社員に扶養手当、夏季休暇等は必要か?」(2020年11月4日号)

 

10月13日と15日に、同一労働同一賃金に関する重要な最高裁判所の判決が出ました。今回は、10月15日の契約社員に対する扶養手当、夏期休暇等に関する判決(日本郵便佐賀事件・東京事件・大阪事件)のポイントをご紹介します。

 

この3つの事件は、契約社員に対し、①扶養手当、②夏期冬期休暇、③有給の病気休暇、④年末年始勤務手当、⑤年始期間における祝日給を付与しないことが、旧労働契約法第20条に反するか、つまり同一労働同一賃金に反するかどうかが、争われたものです。

 

旧労働契約法第20条とは、先般の働き方改革関連法によって改正される前の条文で、有期雇用労働者と正社員の労働条件は、次の3点を考慮して、不合理であってはならないとされており、この考え方は、短時間労働者を含めて、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条に引き継がれています。

 

 ① 職務の内容の違い

 ② 職務の内容や配置の変更の範囲の違い

 ③ その他の事情

 

 

1 扶養手当

 

 日本郵便㈱は、正社員に対し、扶養親族の種類に応じ、扶養親族1人につき月1,500~15,800円を支給していましたが、契約社員に対しては支給していませんでした。

 

 最高裁判所は、この扶養手当について、長期雇用を前提として基本給を補完する生活手当としての性質および趣旨を有するとしています。

 

 そして、契約社員についても、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給する趣旨はあてはまるとしています。

 

 争いになった契約社員は、契約期間が6か月以内または1年以内とされており、有期労働契約期間の更新を繰り返して勤務する者がいるなど、相応に継続的な勤務が見込まれるといえるとしています。

 

 したがって、郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当を支給する一方で、本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるとしています。

 

2 夏期冬期休暇

 

 日本郵便㈱は、正社員に対し、夏期休暇は6月1日から9月30日まで、冬期休暇は10月1日から翌年3月31日までの各期間において、それぞれ3日まで有給休暇を付与していましたが、契約社員に対しては付与していませんでした。

 

 最高裁判所は、この夏期冬期休暇について、年次有給休暇や病気休暇等とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るという目的によるものであり、夏期冬期休暇の取得の可否や取得できる日数は正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていないとしています。

 

 そして、郵便の業務を担当する契約社員は、契約期間が6か月以内とされるなど、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれ、夏期冬期休暇を与える趣旨は、契約社員にもあてはまるとしています。

 

 したがって、郵便の業務を担当する正社員に対して夏期冬期休暇を与える一方で、郵便の業務を担当する契約社員に対して夏期冬期休暇を与えないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるとしています。

 

3 有給の病気休暇

 

 日本郵便㈱は、正社員に対し、私傷病による有給の病気休暇を少なくとも引き続き90日間まで与えていましたが、契約社員に対しては私傷病による病気休暇を1年に10日の範囲で無給の休暇として与えていました。

 

 最高裁判所は、この有給の病気休暇について、正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものとしています。

 

 そして、郵便の業務を担当する契約社員についても、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、私傷病による有給の病気休暇を与えるという趣旨はあてはまり、争いになった契約社員は、契約期間が6か月以内とされており、有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者がいるなど、相応に継続的な勤務が見込まれているとしています。

 

 したがって、私傷病による病気休暇として、郵便の業務を担当する正社員に対して有給休暇を与える一方、同業務を担当する契約社員に対して無給の休暇のみを与えるという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるとしています。

 

4 年末年始勤務手当

 

 日本郵便㈱は、正社員に対し、12月29日から翌年1月3日までの間に実際に勤務した場合に、1日4,000円または5,000円の年末年始勤務手当を支給していましたが、契約社員には支給していませんでした。

 

 最高裁判所は、この年末年始勤務手当について、12月29日から翌年1月3日までの期間は、最繁忙期であり、多くの労働者が休日として過ごしているこの期間において、郵便の業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するとしています。また、年末年始勤務手当は、正社員が従事した業務の内容やその難度等にかかわらす、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、その支給金額も、一律であるとしています。

 

 そして、この年末年始勤務手当を支給する趣旨は、郵便の業務を担当する契約社員にもあてまるとしています。

 

 したがって、郵便の業務を担当する正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で、同業務を担当する契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるとしています。

 

5 年始期間における祝日給

 

 日本郵便㈱は、正社員に対し、祝日を除く1月1日から3日までの期間(以下「年始期間」といいます。)に勤務したときに祝日給を支給していましたが、契約社員に対しては支給していませんでした。

 

 最高裁判所は、この祝日給について、年始期間における勤務の代償として支給するという趣旨であり、契約社員にもあてはまるとしています。

 

 したがって、正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で、契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるとしています。

 

 以上、日本郵便㈱に関する3つの最高裁判所の判決を見てきましたが、実は、東京と大阪の事件について、控訴審では、住宅手当を契約社員に支給しないことは不合理であるという判決が出ており、これらは上告されませんでしたので、判決として確定しています。

 

 つまり、正社員にも転居を伴う配置転換等が予定されていない場合には、正社員も契約社員も住宅に要する費用は同程度であるので、正社員には支給している住宅手当を契約社員には支給しないといことは不合理であるとされていて、この点については、判例として確立しているということです。

 

 このように、特に、扶養手当や住宅手当、夏期休暇などは、基本的には、契約社員やパートタイマーなどにも付与する方向で対応すべきものと考えられますので、ご注意ください。

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